[携帯モード] [URL送信]

二つの魂

「黒崎。」

 オレンジの腰まである髪を揺らし、黒崎と呼ばれた少女が振り返った。

「冬獅郎。」
「現世での任務だと聞いたが。」
「ああ、ちょっと出かける。」

 冬獅郎と呼ばれた少年は銀の髪で、その瞳は翡翠のように澄んだ緑色の瞳をしていた。

「心配すんな。」
「お前の実力は重々承知だ。」
「なら。」
「それでも、恋人の心配をしない程俺は冷酷じゃないぞ。一護。」

 一護は恋人という言葉で顔を赤く染め、恨みがましく冬獅郎を睨んだ。

「人前で恋人とかいうな。」
「誰もいないが?」
「……。」

 冬獅郎の言う通り二人以外誰もこの廊下にはいなかった。しかし、一護はそんな事を考える余裕などなかった。

「初心だな、一護は。」
「ほっとけ。」

 真っ赤な顔でそっぽを向く一護があまりにも可愛らしく、冬獅郎は喉の奥でくくくと笑った。

「でも、気をつけろよ。」
「分かっているさ。」

 一護は冬獅郎が本気で言っているのを悟ってか、真顔で返した。

「それにしても入隊して一年なのに、もう現世任務か。」
「冬獅郎には言われたくないな。」

 冬獅郎は入隊して半年も経たないうちに現世の任務を任された事があるが、一護は今回が初めてだった。

「伝令神機を忘れるなよ。」
「当然だ。」

 一護は懐に仕舞ってある伝令神機を取り出した。冬獅郎はそんな一護を見て眉を顰めるが、一護はそんな事に気付いていなかった。

「………お前、どこに仕舞っているんだよ。」

 眉を寄せながら呆れる冬獅郎に対し、一護はクスクスと笑った。

「悪い、悪い、袖に直すと無くすんだよ。」
「……お前な。」
「黒崎、副隊長が呼んでいるぞ。」
「ヤベ、じゃあな、冬獅郎。」

 そう言って、一護は先輩の死神の元に走り出した。
 冬獅郎と一護は別の隊にいる。一護は一番で、冬獅郎は十番隊だった。しかも、一護も冬獅郎も真央霊術院を卒業して一年しか経っていないと言うのに、もう一護は十席、冬獅郎は五席まで上り詰めていた。

「無事に帰って来い、一護。」

 冬獅郎は一護の後姿を見送り、そして、己の隊に戻るために踵を返したのだった。
 この時の冬獅郎も一護も、互いの最後の会話になるなんて、全く予想だにしていなかった。

[次へ#]

1/5ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!