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白をはためかせて

 袖のない真っ白な羽織が風に靡く。

「一護。」

 低く心地よい声にオレンジ色の髪を後ろで纏める少女、黒崎一護が振り返った。

「冬獅郎。」

 一護の視線の先に銀の髪を襟足の高さで翡翠色の組み紐によって括る青年、日番谷冬獅郎が、そこにいた。

「十番隊長がこんな所で何やっているんだ?」
「……お前な、俺は確かに十番隊の隊長であるが、その前にこの姿だと、お前の…零番隊の副隊長だ。」
「…なぁ、冬獅郎。」

 いつもなら何か冬獅郎に言い返す、一護なのに、今回は食いつく事無く、低い声を出した。

「オレ…現世に行くんだ。」
「なっ!聞いていないぞ!」
「ああ、昨日唐突に親父に言われた、どうやら、向こうで何かあるらしくて、それに怪しまれないように、オレは向こうでうまく成長する義骸に入って、向こうで暮らすんだ。」
「……。」
「何時帰れるか、分からない。」
「……。」
「十年先か、五十年先か、はたまた百年先か……。」
「お前はそれで良いと思っているのか?」

 いつもは仏頂面の冬獅郎だがこの時ばかりはそんな仮面は剥がれ落ち、ただの男の顔になる。

「正直、お前とは離れたくない。」
「だったら……。」
「悪い、冬獅郎……。俺は零番隊の隊長なんだ。」
「……。」

 冬獅郎だって理解している。自分だって零番隊の副隊長を務め、十番隊の隊長も勤めているのだ。

「この世界や、現世に災いがあるのならば、オレはそれに立ち向かわないといけない。」
「俺も一緒に行ければ、良かったのにな。」
「……お前には十番隊がある。」
「分かっている。もし、俺がただの零番隊の副隊長だったら、お前が何と言おうとついていった。だけど、俺は十番隊の長でもあるんだ。」
「ん。」
「一護。」

 冬獅郎は一護の腕を掴み引き寄せた。

「一つ約束してくて。」
「何だ?」
「俺と…結婚してくれ。」
「――っ!」

 一護のブラウンの瞳がこれ以上ない程見開かれる。

「とう…しろう?」
「本気だ、だけど今すぐじゃなくていい、お前が帰っていてからでいい。」
「待つ事になるぞ。」
「待つ事には慣れている。」
「……。」

 一護は冬獅郎に告白されて、己の返事が何年かかけて返答した事を思い出し、いたたまれない気分になった。

「だから、必ず帰ってきてくれ。」
「冬獅郎……。」
「お前の帰る場所は俺の腕の中だ。」
「うん、帰ってくる。」

 四年前の花咲く丘の上で二人は誓った。

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