白をはためかせて
1
色々な試練が夏梨と遊子を襲い、ついこの間、滅却師である石田とこの空座町に現れた虚の大群を昇華し、そして、大虚を退ける事に成功した。
しかし、一護はそれが誰かが仕組んだ罠だと気づいた。
石田が使った撒き餌には本来ここまで虚をおびき寄せるものではなく、しかも大虚を出現させるなんて、そんな事出来るはずがないのだ。
敵は一護が思っているよりもずっと厄介なのかもしれない、そして、もし敵を逃してしまえば彼らは虚圏に逃げ込んでしまうだろう。
今彼女は硬い表情である光景を見下ろしていた。
一護の妹たちが隊長、副隊長によって傷を負っておる。本当はすぐにでも駆けつけたいだけど、そうすれば全てが無に帰すのだ。
妹たちが白い羽織を羽織った男に倒され、そして、ルキアが連れて行かれた。
一護は妹たちやが気絶しているのを霊圧で確認し、下に降り立った。
「よく頑張ったな。」
一護は夏梨と遊子の傷を塞ぎ、そして、夏梨を背負い、遊子を脇に抱えて地面を蹴った。
彼女がたどり着いた先は浦原商店だった。
「浦原さんはいるか?」
「ああ、黒崎さんどうも…って厄介ごとですか?」
「まあ、そう言うな、妹たちを頼んだ。」
「……分かりました、後の事は任せてください。」
「ああ、オレはほんの少し現世を離れるが、頼んだ。」
「分かりました。」
浦原が頷き、一護は零番隊に続く道を開いた。
「久しぶりだな…ここも。」
感慨深げに一護がそう呟くと彼女は己の執務室に足を向けた。
「確か…この辺に……。」
一護は机をごそごそと漁り始め、そして、目当てのものを見つける。
それは翡翠の石がついた耳飾だった。
「これさえあれば霊圧が遮断できるな。」
一護は浦原から外套を借りても良かったのだが、それだと邪魔なのでこちらで昔用意したものを取りに来たのだ。
そして、ついでと言うように横においてあった仮面を手にする。
こちらは一護が冬獅郎を副隊長に迎える前にちょっとばかし、規律が面倒なので変装して虚退治をやっていた時に使っていたただの何の変哲も無い仮面だ。
「………………………ちょっとくらいいよな?」
一護はそのまま帰ろうかと考えていたのだが、ふいに、冬獅郎に会いたくなってしまったのだ。
「あっ、でも、この格好じゃやばいし…。」
一護が考え事をしているとふっとあの術を思い出した。
「まっ、いっか、あっちの方だったらばれないばれない。」
一護は翡翠の耳飾をつけ、そして、九歳くらいの少女の姿に変わった。
「これでよし。」
満足そうに微笑んだ一護は尸魂界に足を向けたのだった。
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