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橙ネコと氷雪の隊長

 オレの名前は一護、冬獅郎が生きていた時に貰った名前だ。
 オレは猫としての寿命を終え、尸魂界にやってきた。そして、物凄く幸運な事に冬獅郎に再会できたのだ。
 オレはこれを運命だと思っている。
 そして、今オレは冬獅郎の布団の上で丸くなって寝ていた。

「ふみゃっ……。」

 外が徐々に白み始め、オレは体を伸ばす。
 オレの朝は早いだろう、冬獅郎よりも早く起きて、彼の寝顔を見る。
 本当は人間の姿になって、食事の準備などをしてみたいが、冬獅郎はオレが人間になれるなんて知らない。
 もし、オレが実際に調理中だったり、洗濯中などでばったり会ったらと思うと、ゾッとする。
 絶対にばれてはいけないと思う。
 いくら冬獅郎が優しくても、こんな化け猫、誰も受け入れてはくれないだろう。
 昔ドジって人に姿を見られた時があった、その時、化け猫と言われ、石まで投げられたのは悲しかった。
 冬獅郎はそんな事をしないだろう、だけど、嫌われるのが怖いのだ……。
 絶対に姿を見せてはいけない、そう、思うが…、もし、彼が何か危機に晒された時は、迷う事無く人間の体を取る事を心に決めている。
 猫の体では限度がある、だけど、人間なら猫以上に冬獅郎の手伝いが出来るだろう。

「う……。」

 オレが考え事をしていたら、冬獅郎が小さくうめいて、オレの大好きな翡翠のような目をうっすらと見せた。

「一護…?」

 みゃー、とオレは鳴き、冬獅郎に擦り寄る。
 冬獅郎はくすぐったいのか、微かに声を上げて笑い、オレの頭を撫でた。

「はよう。」

 オレはそれに返事するように鳴き、彼はそっとオレから手を離した。

「さっさと片付けるぞ。」

 冬獅郎はそう言うと立ち上がり、布団を片付け始めた。
 オレはそれを一瞥してから、外に出る。
 前に一度冬獅郎の側に居すぎて尻尾を冬獅郎に踏まれた時があり、あの時の痛みは正直もう二度と経験したくなかった。
 しばらくしていると冬獅郎は布団を片付け終わったのか、部屋から出てきた。
 オレは冬獅郎の後をついていく。

「一護、今日は隊主会が午後からあるからな。」

 冬獅郎の言葉にオレは鳴いて、返事をして午後からの予定を考える。
 朝は取り敢えず、冬獅郎のお婆ちゃんを見に行くつもりだ、最近、冬獅郎がお婆ちゃんの様子を見に行けないと気にしていたからである。
 お昼は適当に昼寝などをするかとオレは考える。
 オレが色々と考えている間にいつの間にか冬獅郎は顔を洗い終え、そして、死覇装に着替え終えていた。
 いつの間に着替えたんだとオレは思うが、冬獅郎はオレの視線に気づかないのか、さくさくと台所に行き、オレにミルクを置いた。

「ほら、朝食だ。」

 冬獅郎はそう言うと自分のコップに入っている牛乳を飲み干し、そのまま十の字が書かれた羽織を羽織った。
 オレは冬獅郎を軽く睨むが、冬獅郎は全く気づいていない。
 冬獅郎の食生活はかなり乱れている、朝食や夕食を抜かすなんてしょっちゅうだし、もし朝食を食べたとしても、オレにしたら絶対に食べたうちに入らないものなのだ。
 そう、今日もそうだ。
 冬獅郎は絶対にこの牛乳一杯で終わらせる気だ。
 案の定、冬獅郎はカップを置き、すぐに部屋から出て行ってしまった。
 オレはちびちびとミルクを飲みながら、どうやって冬獅郎の食生活を改善できるか考える。
 こうして、オレの朝は始まる。

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