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橙ネコと氷雪の隊長

 冬獅郎は悔しさで唇を噛んだ。
 指令で出されていた虚は簡単に昇華できた、しかし、待ち伏せしたかのように次々と虚が現れ、最後には大虚まであらわれ、冬獅郎以外の死神は全て瀕死状態だった。

「くそ……。」

 冬獅郎は氷輪丸を構えるが、血が出すぎているのか目の前が霞み始めていた。
 そんな判断が鈍っている彼に大虚の口が開き、そこから光が見えた。

「仕舞ったっ!」

 冬獅郎はそれを避けようとするが、残念ながら体が思うように動かなかった。

「くそっ!」

 冬獅郎は自分が死ぬかもしれないと思い、仲間の姿、自分を見守ってくれたおばあさんの姿、そして、死後までも自分を慕ってくれた猫を思い浮かべた。

「冬獅郎っ!」

 凛とした女性の声が聞こえ、そして、冬獅郎を傷つけようとした虚閃をその女性が受け止めた。
 この時、冬獅郎は今までにないほど驚いた。それは、女性が虚閃を受け止めた事にか、彼女の持つ斬魄刀の大きさか、それとも、女性の髪があの猫を思い浮かばせるのか……。
 否、一番の理由は女性が服を纏っていない事だろう。

「なっ!」
「冬獅郎、無事か?」

 女性が振り返ると冬獅郎はそっぽを向き、返り血や自分の血で汚れた羽織を女性に向かって投げた。

「それでも着ろ。」
「あっ、あ〜、非常事態だから忘れてた……う〜ん、冬獅郎、それはいいよ、どうせ、こうした方が早いから。」

 訳の分からない事を口にする女性に冬獅郎は怪訝な顔をする。

「卍解……天鎖斬月。」
「なっ!」

 女性が行き成り卍解をし、その形状にも冬獅郎は驚いた。
 彼女は漆黒の死覇装を変えた衣を纏い、そして、先ほどまで大きかった斬魄刀もほっそりとしているのだ。

「ちょっと待ってろよ、今片付けるから。」
「お前は…。」
「月牙天衝っ!」

 女性は漆黒の刃を放ち、一気に大虚を昇華させた。

「よし、冬獅郎大丈夫か?……酷い怪我だな……ちょっと苦手だけど…。」

 女性は冬獅郎の傷を見て、そして、手をかざし、鬼道で彼の怪我を治し始めた。

「………お前は誰だ?」
「……嫌わないか?」
「何で嫌わなければならない。」

 初対面の女性を嫌いになるなんて冬獅郎には理解が出来なかったが、彼女があまりにも真剣な表情をしていたので、頷いた。

「オレは一護だ。」
「い、一護だと?」

 猫と同じ名前なのか、それとも――。

「オレは猫の一護だ。」

 少女は寂しそうな顔をして、そう言った。

「お前……何で。」
「猫のまま死んだら、冬獅郎の側にずっと居られないと聞いた。だから、人型になれるように努力をした。」
「……。」
「ごめんな、こんな気味の悪い猫なんて…嫌だよな。」

 小刻みに震える一護に冬獅郎はそっとその頭を撫でた。

「驚いただけだ。」
「冬獅郎?」
「ありがとう、一護…助かった。」

 冬獅郎は一護に礼を言って、部下の治療に当たる。
 しばらく、一護は呆けていたが、すぐに冬獅郎の手伝いに戻る。
 そして、四番隊の救援部隊が来るまでに応急処置が終わり、奇跡的にも死者は一人も出なかった。
 それから、十番隊では一護は十番隊の守り神じゃないかと、噂されるようになる。

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あきゅろす。
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