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橙ネコと氷雪の隊長

 先日一護と買い物に行った、たったそれだけの事なのに、何でこんな事になるのかと、冬獅郎は思わず頭を抱えた。
 彼の目の前にあるのは一冊の最新の瀞霊廷通信だ。

「冬獅郎…ごめん。」

 項垂れる猫の一護に冬獅郎は首を横に振った。
 幸いにも今ここにいるのは冬獅郎と一護の二人だけで、一護は小声で冬獅郎に話しかける。

「オレがもっと周りに気を配っていれば。」
「いや、これは俺も同罪だ……。まあ、一人ひとりの動きを注意できるわけないからな…。それにしても、これは…。」

 彼らが今見ている記事の見出しは「堅物で有名な十番隊隊長に彼女かっ!」と書かれていて、一護とのツーショット写真が三、四枚貼られている。

「……せめて、かつらでも被ってれば…前に十番隊に働いていた名無しの権兵衛ですんだのにな…ごめん。」
「……。」

 本気で落ち込む一護に冬獅郎は眉を寄せる。
 彼女にこんな顔をさせたくないのに、そうさせてしまった自分に冬獅郎は苛立ちを隠せなかった。

「どうするか……。」

 冬獅郎は本気で今後の事を考えた。
 一護を表に出す事は出来ない、彼女を表に出せば絶対に死神連中が騒ぐだろうし、それに、もし猫の一護と同じだとばれれば間違いなく十二番隊が彼女を捕まえに来るだろう。
 それは絶対に避けておきたかった。

「冬獅郎…。」
「大丈夫だ、俺に任せろ。」
「……うん。」

 悲しげな一護の頭を撫でて、冬獅郎は出て行った。
 まず、彼が足を運んだのは九番隊だった。

「檜佐木はいるか?」
「あれ?日番谷隊長?どうしたんですか?」
「この前出した瀞霊廷通信の事だが。」

 檜佐木はその言葉に顔を引きつらせた。

「あ…あれは……。」

 冷や汗をだらだらと流し、檜佐木は視線を泳がせる。

「……。」

 無言でいる冬獅郎が恐ろしいのだろうか、檜佐木はすぐに土下座し、これには流石の冬獅郎も驚いた。

「すいませんでしたっ!」
「……いや、俺は謝ってもらうために来たのではないのだが…。」
「へ?」

 間抜けな声を上げる檜佐木に冬獅郎は苦笑する。

「まあ、脅しに来た。」
「――っ!」

 まだ抜かれていない氷輪丸を突きつけられたかのように、檜佐木は固まった。

「時間はある、だからじっくりとな。」

 檜佐木の心の悲鳴が上げられたのだが、誰にも知られる事はなかった。

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あきゅろす。
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