橙ネコと氷雪の隊長
6
「……ご…、いちご…、一護っ!」
必死で誰かが自分の名前を呼んでいた。
一護が目を開けるとそこには青い顔をした乱菊の姿があった。
「あっ……良かった……。」
一護が目を開けた事に気づいた乱菊はホッと息を吐いた。
一護は周りの部屋の光景を見て、ここが四番隊なのだと知った。
「あんた、丸三日生死の境をさまよっていたのよ。」
一護は目を丸くさせるが、寸前の自分の姿を思い出し納得する。
「隊長もまだ目覚めないし……、もう駄目かと思ったわよ。」
一護は乱菊の言葉に驚き、体を起こそうとする。
「あっ、あんたは安静にしとかないといけないのよっ!」
乱菊は一護を寝かせようとするが、冬獅郎を心配する一護は無理やりにでも起きようとする。
「…分かった、ちょっと待ってなさい。」
乱菊はそう言うと一旦消え、そして、次に現れた時には大きな籠を持って現れた。
「あんたはここで寝てなさい、隊長の所にはあたしが連れて行くから。」
一護は一つ鳴き、じっとする。
乱菊は一護がじっとした事にほっとしながら、一護を籠に入れ、そして、冬獅郎の病室に向かった。
「……。」
一護は青白い顔をしている冬獅郎を見て、涙が出そうになった。
「……隊長…一護ですよ…早く、起きてあげてくださいね……。一護は貴方を待っているんですからね。」
乱菊はそう言うと冬獅郎の髪を撫で、一護と冬獅郎をしばらく二人っきりにさせようと思ったのか、部屋から出て行った。
一護は乱菊の霊圧が十分離れたのを確認して、声を出す。
「冬…獅郎?」
戸惑いがちに呼ばれ、ピクリと冬獅郎の瞼が震え、そして、彼女の大好きな翡翠色の瞳が現れた。
「……いち…ご?」
「冬獅郎っ!」
「……怪我は大丈夫か?」
自分の事よりも一護を案ずる冬獅郎に一護は泣き顔を見せる。
「馬鹿野郎…、オレの体よりも自分の体を心配しろよ……。」
「それはお前も同じだろう…。」
自分の体については無頓着な二人は同じ事を思っていた。
「ごめんな、護れなくて。」
突然冬獅郎が謝り、一護は頭を振った。
「ううん、オレだって…冬獅郎を護れなかった……。」
「……一護…。」
「…冬獅郎。」
「ん?」
「生きていてくれてありがとう。」
一護は心からの言葉を口にして、冬獅郎はその言葉に目を丸くさせる。
「ありがとう……。」
「……一護、礼を言うのは俺の方だ……生きていてくれて……俺の側に居てくれてありがとう。」
二人はまだこの戦いが始まったばかりだと知っていた。
しかし、それでも、今生きている事に感謝した。
乱菊が戻るまで、一護と冬獅郎は互いが生きていた喜びの言葉を口にする。
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