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橙ネコと氷雪の隊長

 一護は外が異様な気配を発しているのをその肌で感じていた。
 だけど、今彼女が出来るのは目の前にいる少女を見張る事だけだった。
 一護は必要に応じて、人型に取れるように気を張り詰めていた。
 今度こそ、桃を護るには人型じゃないといけないと思った。
 正直に言えば猫の姿の方が、桃に気づかれずに尾行が出来るのだが、今回はどうしても戦闘を行わなければならない気がした。
 そして、時が動き出した。
 冬獅郎、乱菊が四十六室に向かっている、その後を桃が霊圧を押さえ、追いかける。

「……なんか、すごく嫌な感じがする。」

 一護は人の姿に変化し、桃を尾行した。
 そして、しばらくして、冬獅郎と乱菊が吉良を追うように外に飛び出し、代わりに桃が中に入っていく。
 その時、一護は今までにないくらい胸がざわめいていた。
 中に入ると、桃と市丸、そして、死んだとされた藍染がいた。

「雛森副隊長っ!」

 一護は思わず叫ぶと、まるで、歓迎されていないものが入ってきたかのように、藍染が冷たい目で睨んできた。

「貴女は?」
「――っ!離れてっ!」

 一護は藍染が握っているものを見て、瞬歩を使い、桃の側に行く。

「あんた、雛森副隊長に何をしようとした。」

 一護は桃を背にかばい、藍染を睨みつける。

「君は誰かな?」
「部下を手にかけるような奴に名乗る名なんてないっ!」
「……貴女…何を言っているの?」

 一人だけ訳が分からない桃は呆然と一護と藍染の会話を聞いていた。

「藍染、一つだけ聞きたい。」
「おやおや、こちらの質問は答えず、そちらは質問をするのかい?」
「……十番隊隊長直属の部下、とだけ言っておこう。」
「…そうか、日番谷くんの部下か。」

 藍染は口元を歪ませた。

「オレからの質問はあの時、皆があんたの斬魄刀を見て、嘆いていたのはあんたの斬魄刀の能力か?」
「……。」

 藍染の目がこれ以上ないというほど冷たい色を宿した。

「…へぇ、君はアレがそう見えたんやね。」
「……。」

 一護は市丸を睨んだ。

「これは厄介な相手やね、藍染隊長。」
「そうだね、だけど……。」

 すっと細められた目に一護は警戒を露にして、斬魄刀を構えた。

「――っ!」

 一護は反射的に刀を後ろに向けると、丁度襲ってきた刃を弾く事が出来た。

「ほぉ、まぐれにしては凄いね。」
「……。」

 一護は藍染が冗談じゃなく、自分たちを殺そうとしているのを知り思わず顔を顰めた。

「嘘ですよね…藍染…隊長……。」

 今にも崩れそうな桃に一護はどうしようかと唇を噛む。
 その時、彼女にとって唯一の光が到着する。

「雛森っ!」
「日番谷隊長、この方を頼みますっ!」

 一護は桃を冬獅郎に預け藍染と市丸を警戒する。
 一方桃を預けられた冬獅郎はこの状況が何なのか必死で読み取ろうとしていた。

「あなた方は一体何をしでかす気なのですか?」
「さあ、教える義理はないよ。」
「そうでしょうね。」

 一護は斬魄刀を握る手を強くし、そして、一気に藍染に斬りかかる。
 後ろで桃の悲鳴が聞こえたが、一護は無視して藍染に斬りかかるが、残念ながら市丸によってその刃は止められた。

「くそっ…。」
「可愛い娘がそないな汚い言葉を喋らん方がええで。」
「煩いっ!あんたの方がよっぽど変な喋り方だ。」
「酷い娘やね。」
「……。」

 一護は市丸と対峙しているといつの間にか藍染が冬獅郎と桃に近づいていた。

「と…日番谷隊長っ!」

 一護は思わずいつもの癖で「冬獅郎」と叫びたくなったが、寸前のところで言い直せた。

「卍解っ!大紅蓮氷輪丸。」

 冬獅郎は卍解をして、藍染をしとめようとするが、一護の目には冬獅郎が全く別のところを狙っているように映った。

「――っ!冬獅郎―――――――っ!」

 油断した冬獅郎に藍染の刃が通り、一護は愕然とした。

「……鏡花水月……。」

 一護はこの時藍染の能力を悟った。

「そう、これが鏡花水月の能力。完全催眠だよ。」

 一護は怒りを露に藍染を睨み、そして、低い声を出す。

「卍解……天鎖斬月…。」

 風が一護を中心に渦を巻き、そして、それがやんだと同時に一護は踏み出し、藍染に攻撃を仕掛けるが、彼は簡単に一護の攻撃を受け止めた。

「…卍解しても、この程度か。」

 蔑むように言う藍染に一護はニヤリと笑う。

「これで終わると思うな。」
「何?」
「月牙…天衝っ!」

 至近距離の月牙ならば藍染だって避けられないと思った一護は漆黒の刃を藍染にぶつけた。

「くっ…。」

 一護の攻撃は見事藍染の刀を持つ腕を使えなくさせた。

「どうだ、これで…。」

 勝ち誇ったような顔をした一護だったが、近くから静かな殺気を感じ、体を強張らせた瞬間――。

「射殺せ、神槍。」

 市丸の斬魄刀が一護の負傷していた傷をえぐり、彼女は顔を顰めた。

「油断していたようだね。」
「…くそ……。」

 一護は己の失態に腹を立て、そして、自分を見下ろす藍染を睨んだ。

「……残念ながら、新手がきたようだね。」
「ほな、行きますか。」
「ああ。」

 一護は近づく霊圧が卯ノ花のものだと知り、周りを見渡し、そして、気絶していない桃に声を掛けた。

「…雛森副隊長……、もうすぐ…卯ノ花隊長が来てくれます…それまで、日番谷隊長を頼みます。」
「あ、貴女は…。」
「私は知られてはいけない身、今回の事は内密に。」

 一護はそう言い残すと桃の前から姿を消した。

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あきゅろす。
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