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橙ネコと氷雪の隊長

 悲鳴が上がった、一護は猫の姿だけど、瞬歩を使い、そして、桃が嘆いている姿を見て、上を見上げると、眉を寄せた。
 何を見て、彼女は嘆いているのか理解できなかった。
 だけど、周りに近づくものは全員、息を呑んでいる。
 一護は冬獅郎の姿を探した。
 その時、下から桃の怒りの篭った声が聞こえ、続いて刃がぶつかる音がした。
 二つの霊圧がぶつかり、一護は思わず人型を取ろうかと考えた瞬間、銀色の髪をした少年が二つの刀の動きを止めさせた。

(…冬獅郎…。)

 一護は少年の姿を見てホッと息を吐いた。
 そして、彼は刀を抜いた桃と吉良にそれぞれ罰を与えた。
 一護は冬獅郎が悲しんでいる事をその背を見て感じ取り、そっと彼の所に行こうとするが、ぞわりと嫌な感じがした。

「……。」

 一護は振り返ってみるが、残念ながらそこには何もなかった。

「……何だったんだ一体…。」

 一護は冬獅郎の元に行く事を一瞬躊躇し、その嫌な気配を追う事にした。
 彼女が行き着いた先は藍染の自室だった。
 彼女は誰もいない事を確認して、人型になり、死覇装を着、そして、黒いかつらを被った。
 一護は辺りを見渡し、そして、一通の手紙を見つける。
 桃宛に書かれたそれは一瞬破るのを躊躇したが、彼女の勘からしてそれはよくないものだと感じ、そっと破った。

「……。」

 中に書かれた文字を目で追ううちに、一護の表情が強張っていく。

「……何だよ…これ…。」

 中に書かれていたのは冬獅郎を追い込む罠だった。
 一護は怒りでそれを破ってしまいそうになるが、何とかそれを押さえ、懐にそれを仕舞い何事もなかったかのように、外に出た。
 一護は早足で冬獅郎の霊圧を探り、その方向に向かった。
 一護が走っている間、一護の霊圧を感じた冬獅郎は部下に指示を飛ばし、そして、わざと一人になるようにした。
 一護がそこにたどり着く頃には人がいなかった。

「一護。」
「……。」

 一護はそっと周りに誰もいないのか探るが人がいないと分かり、ホッと息を吐いた。

「冬獅郎……そっちはどうなんだ?」
「ああ、これから藍染の私室に向かって奴の遺品を探る。」
「……。」

 冬獅郎の言葉に一護は先に自分が探った事を言いにくく感じたが、それでも、懐に入れたこれだけはたとえ、怒られても見せないといけないと思った。

「ごめん、冬獅郎、さっきオレが見てきた。」
「……。」

 一護の言葉に冬獅郎は目を見張ったが、特に何も言わなかった。
 冬獅郎は一護が死神以上に勘が働くし、それに自分の知っている人物の中でも一番手柄を立ててるのを知っていた。

「それで、これを見つけたんだ。」

 一護は懐から取り出したそれを冬獅郎に渡した。
 はじめ、冬獅郎は他人宛の手紙を一護が見た事に何か言おうかと思ったが、彼女のあまりにも真剣な目に冬獅郎はまず中身を見てから怒ろうと考えた。
 手紙を封筒から取り出し、冬獅郎はそれに目を通し、そして、固まる。

「何だこれは……。」

 藍染の手紙に書かれていた事は全く身に覚えがない事ばかりで、冬獅郎はなぜこんな事が書かれていたのかと、考える。

「多分だけど…、もし、冬獅郎がその手紙を見つけたら、多分、そのまま桃さんに渡していたよな?」
「ああ……。」

 間違いなく他人の手紙を読む事を自分はしない、そう思いながら、冬獅郎は一護の言葉に頷いた。

「桃さんがこれを見れば…多分、信じたいけど、信じられず、冬獅郎との間に亀裂が入り…そして――。」
「あいつは俺に刀を向ける…。」
「桃さんは藍染を尊敬していたから…多分、そう動くと思う。」
「……。」

 冬獅郎はこの手紙を見て、自分はどうすればいいのかと考える。
 この手紙を渡せば間違いなく、一護の言った通りになるだろう、だけど、渡さなければ、今後の敵の動きが分からない。

「……冬獅郎、オレがずっと桃さんの側にいるから、その間、自分の思うように動いてくれ。」
「一護?」
「敵の狙いがもし、この紙に書かれている事だったら、ルキアや旅禍が危ないし…、それに瀞霊廷だって危ないだろう…。」
「……。」
「冬獅郎…阻止してくれ…、オレは精一杯桃さんを護るから。」
「……。」

 真剣な顔をする一護に冬獅郎は頷いた。

「ああ、頼んだぞ。」

 一護はしっかり頷き、猫の姿に戻り、桃がいる牢に向かった。

「……俺も動かねぇとな。」

 冬獅郎は気合を入れなおし、一歩前に踏み出した。

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