橙ネコと氷雪の隊長
1
乱菊は溜息を吐いた。
「本当にどうしたものかしら。」
最近の自分の隊の隊長、日番谷冬獅郎はより枯れたように思う。
「一護が悪いんじゃないんだけどね……。」
だいぶと前から冬獅郎が飼い始めた猫、一護を最近の冬獅郎はかなり構っていると思う。
それは乱菊だけではなく、冬獅郎の幼馴染である雛森桃も同じ意見だったりするが、彼女の場合、感情をあらわにする冬獅郎を微笑ましく思っている節がある。
ニャー
足元から鳴き声が聞こえ、足元を見るとそこには一護がいた。
「あら、一護、隊長の所にいなくていいの?」
乱菊の言葉に一護は抗議の鳴き声を上げる。
「………もしかして、こんな所で油を売るなと?」
乱菊の言葉に一護は大きく首を縦に振った。
乱菊が今居るのは茶屋で彼女の目の前には最新のデザートであるケーキがあった。
「ちょ、ちょっとくらいいいんじゃないかな〜?」
乱菊は一護にそう言うが、一護は半眼で乱菊を睨んだ。
「…あんた、だんだん隊長に似てきて口うるさいわよ。」
恨めしそうに一護を見る乱菊に一護はゆらゆらと嬉しそうに尻尾を振った。
「……そんな風に喜ぶのはあんただけね。」
乱菊は肩を竦め、ケーキをパクリと食べた。
「ねぇねぇ、一護。」
猫に話しかける乱菊は傍から見ればかなり異様なのだが、一護だと誰もが分かっているので特に気にも留める死神はいなかった。
何せ、一護に対して愚痴を吐く死神が多いのだ、たとえば七緒だったり、イヅルだったり、上司に不満がある人が多いのだ。
「隊長に彼女なんて居ないのかしら?」
乱菊の言葉に一護の目が揺れた。
「本当にもったいなわよね、女の子に人気があるのに、何かしらないけど、完全に趣味が親父じみているし。」
「誰が親父じみているだと?」
地を這うような低い声に乱菊は顔を引きつらせる。
「た、隊長、いつから。」
「俺はこいつと一緒に来たんだが?」
乱菊は冷や汗を流しながら、何とか言いつくろうかと、考えるが、残念ながらいいネタが浮かばなかった。
「……。」
黙りこむ、乱菊に見かねたのか、一護は一鳴きして、冬獅郎に擦り寄った。
「何だ、許せというのか?」
眉を寄せる冬獅郎に一護は肯定するかのように鳴く。
「はぁ。今回はこいつに免じて許すが……もし、今日の執務をこれ以上サボると、分かっているんだろうな?」
どすの利いた声に乱菊は冷や汗を流しながら首を縦に振った。
「一護、松本戻るぞ。」
颯爽と身を翻す冬獅郎の肩に一護は飛び乗り、乱菊は渋々と彼についていく。
一護はこの時、後ろを見て項垂れる乱菊を見て、少し冬獅郎はやりすぎではないのかと考えるが、すぐにその考えが吹っ飛ばされるなど、彼女は予想だにしていなかった。
そう、乱菊は執務室に戻って一時間くらいはしっかりと仕事をこなしていたのだが、まるでエネルギーが切れたかのように、彼女はソファーの上で雑誌を見ながら寝そべっていたのだ。
こればっかりは流石の一護も勘弁できなかったのか、冬獅郎の怒声を止める事をしなかったのだ。
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