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橙ネコと氷雪の隊長



 猫の寿命なんて、人間に比べればあっという間のはずなのだが、その猫は違った。


 オレンジ色の毛並み、ブラウンの瞳、猫としてはかなり異端な姿に、ただ一人その猫を大切にする人物がいた。

「お前、こんな所に居たのか?」

 猫はミャ―、と鳴き、屋根から飛び降り、少年の腕の中に飛び込む。

「お前な…、俺が受け止め損ねたらどうするんだよ……。」

 呆れるような声を出す少年は日本人にしたら異端な銀色の髪と碧色の瞳を持っていた。
 猫は少年の胸に頭を擦り付ける。

「聞いていないか…、まあ、猫だしな。」

 暢気な猫に対し、少年は呆れた表情をする。
 日番谷冬獅郎、それ少年の名前で、彼はこの村にとってはかなり異端な存在で、大人から子どもまで彼を避けている、だけど、この自分と同じ猫にしたら異端な彼女だけは彼の側に寄ってくる。

「お前は本当に変わっているな。」

 猫は冬獅郎の言葉に反応するように鳴く。

「……こんな俺なんかに懐くなんてな。」

 猫はその言葉に不満そうに鳴く。

「悪かった、拗ねるなよ。」

 感情豊かな猫に冬獅郎は苦笑を浮かべる。

「お前さ、他の奴にも懐けよな。」

 冬獅郎は猫の頭を撫でながら、そう呟いた。

「俺がいつまでも側にいるとは限らないんだからな……。」

 その言葉はまるで自分の先を知っているようで、猫は不安になって鳴く。

「悪かった、そんじゃ、俺は薪を集めないといけないからな…じゃあな。」

 そう言うと冬獅郎は猫を地面に置き、立ち去る。
 そして、彼の呟きは真となってしまった。あの日から数日するかしないかの内に少年は亡くなってしまったのだ。
 猫はその死を知ってしまい、後を追いたかったが、そこに一匹の黒猫がひらりと飛び降りた。

「お主が死んだところであの小僧には会えないぞ。」
『どうしてなんだ…。』
「お主は猫じゃ、向こうに、尸魂界に行けたとしても、お主の寿命はあの小僧よりも短いのだぞ。」
『だったら、どうすればいいんだよ……。』
「お主、覚悟はあるか?」

 猫は不思議そうに首を傾げた。

「覚悟があるならば、一つだけ方法がある。」
『――っ!本当か。』
「ああ、だが、死ぬほど辛いものじゃ。」
『やる、もう一度冬獅郎に会えるんなら何でもやってやる。』
「うむ、それならばついて来い。」

 そう言うと黒猫は茂みに入って行く。

『どこまで行くんだよ?』
「もうすぐじゃ。」

 猫は必死になって黒猫を追いかける。

『なあ、名前なんて言うんだよ。』
「うむ、興味があるのか?」
『誰にだって名前はあるんだろ?』
「お主には名があるのか?」
『勿論だ。』

 猫は冬獅郎から一つの名を貰っていた、だけど、その名はあまり彼の口から出る事がなかったが、それでも、彼がくれた大切な宝物だった。

「そうか、わしは夜一じゃ。」
『オレは一護。』
「ふむ。」
『一つを護る。それがオレの名前だ。』
「成程、良い名前じゃ。」

 猫、一護は自分の名前を褒められ、気分を良くしたのか尻尾をゆらゆらと揺らす。

『だろ、冬獅郎がくれたんだ。』
「大事にせぬとな。」
『ああ。』

 一護はとことこと夜一の後をついて行き、そして、もう使われていない廃屋にたどり着いた。

「ここまでくればよかろう。」
『……。』

 一護は期待の篭った目で夜一を見つめた。

「それじゃ、お主に「これ」を出来るよう、頑張ってもらおう。」

 夜一は言い終えたとたん、人間の女性へと変わった。

『――っ!』
「おお、良い反応じゃ。」

 一護の目が大きく見開かれ、夜一は満足そうにほくそ笑む。

『夜一…さんは、人間なのか?』
「うむ、元死神じゃな。」
『死神?』
「そうじゃ、この世、つまり現世と、あの世、尸魂界、まぁ、お主が追おうとしている小僧のいった世界じゃな。のバランスを保つ者じゃ。」
『……。』

 話が壮大になり始め、一護は頭を抱えそうになる。

「うむ、難しいかの?」
『ああ……。』
「簡単に言えば現世と尸魂界を護ろうとする、役職かの。」
『……取り敢えず、夜一さんは元死神という事でいいのか?』
「そうじゃ。」

 一護は溜息を吐き、そして、人間になった夜一をまじまじと見た。

『オレも人になれば、大きくなれるか?』
「それはお主自身の力しだいじゃな。」
『……オレ頑張る。』

 一護は気合をいれ、そして、人間になれるように変化の特訓を始めたのだった。

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