橙ネコと氷雪の隊長
6
闇が迫った時間帯、オレは闇に紛れるように漆黒の衣を着て、廊下を歩いていた。
オレの手には先ほど作った握り飯があり、冬獅郎に食べてもらうために今運んでいるのだった。
「……このまま行けば絶対に体を壊しそうだな…。」
オレは冬獅郎の心配しながら、そっと執務室の前に立ちお盆を床に置いて、軽く戸を叩いた。
「誰だ?」
中から冬獅郎の声が聞こえたので、オレはそっと声を掛けた。
「日番谷隊長、夜食をお持ちしましたので、よければ食べてください。」
「……。」
中で絶対冬獅郎が怪訝な顔をしているだろうと思いながら、オレはそっと身を隠した。
しばらくして、冬獅郎がお盆を持って中に戻っていったのを見て、オレは微笑む。
「さ〜て、今日はこんなもんかな〜。」
オレは背伸びをして、そして、冬獅郎の元に戻る。
中に入ると冬獅郎は握り飯を食べてくれていた。
「一護…お前……。」
冬獅郎はオレの姿を見た瞬間、目を見開いた。
オレはそんな冬獅郎を無視して彼に擦り寄った。
「お前な…、俺は確か松本か雛森の所に行けと言ったよな?」
冬獅郎の言葉にオレは返事するように鳴き声を上げる。
「…仕方のない奴だ、ミルクを飲むか?」
冬獅郎は給湯室に行き、オレの目の前ににミルクの入った皿を置いてくれた。
「それを飲んだら、帰るんだぞ?」
冬獅郎の言葉にオレは首を横に振った。
「…お前な……。」
冬獅郎は眉間に皺を寄せるが、全然怖くない。
オレは冬獅郎の裾を軽く噛んで仮眠室に連れて行く。
「……泊まるというのか?」
オレは肯定するように鳴くと、冬獅郎は呆れたように溜息を吐いた。
「お前は変わっているな、こんな氷のような奴に付き合うなんてな。」
冬獅郎の言葉にオレは怒りを覚え、軽く彼の足に尻尾で叩く。
「………はぁ、何だよ、急に機嫌が悪くなって。」
オレの機嫌が悪くなった理由が分からない冬獅郎は困惑したような顔をするが、オレは絶対に教えてやらないつもりだ。
……というか、教えてやれないのが、本当の事か…。
オレは溜息を吐いて、そして、仮眠室のベッドの枕もとの横に丸くなった。
「……お休み、一護。」
冬獅郎はオレの頭を撫でて、そして、優しい言葉を言ってくれた。
しばらく、オレは冬獅郎が片づけを終えてから布団に入るまで、待っていた。
こうして、オレの一日が終わる、明日はどんな日になるかなんて分からない。だけど、冬獅郎が側に居てくれるなら、それだけで、その日一日は幸せになるのだと、オレは確信している。
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