[携帯モード] [URL送信]

橙ネコと氷雪の隊長

「一護…一護……。」
「う…みゃ……。」

 オレが目を開けるとそこには冬獅郎がいた。
 オレはふっと自分の姿が猫であるか慌てて確認した。

「……どうしたんだ?」

 オレは誤魔化すように鳴き、そして、冬獅郎に擦り寄った。

「本当に気ままだな、お前は。」

 苦笑しながら冬獅郎はオレの頭を撫でてくれた。

「もう、夕刻だぞ。」

 冬獅郎の言葉にオレは驚いて外を見たら、本当に空は真紅に染まっていた。

「疲れが溜まっていたんだな。」

 冬獅郎は何故か表情を曇らせて、オレの頭を撫でた。
 オレはそれが無性に嫌で冬獅郎の指を舐める。

「お前……。」

 冬獅郎は何故か悲しそうな顔をして、そして、オレを抱きしめた。

「すまないな……一護。」

 何を冬獅郎が抱えてるのか分からなかったが、オレはそれを癒したいと思った。

「……前に…虚退治で…重体に陥った部下がいたんだ……。」

 オレはその事を知っていた、オレが来る前に虚退治により彼は傷を負った、確かその部下は今四番隊に居るはずだ、なのに、冬獅郎は過去形で話す。それは二つの意味に取れる。
 一つは意識を取り戻して無事退院した事。
 もう一つは……死んでしまった事。
 多分、冬獅郎のその表情からすると、後者なのだろう。

「俺がもっと…しっかりしていたら…もっと、大人だったら、失わなかったのだろうか……。」

 オレは胸が締め付けられた。だけど、何もする事も出来ない。
 オレは猫だから、人間のように言葉で励ます事も、冬獅郎を抱きしめる事も出来ない…。

「…………すまないな。」

 落ち着いたのか、冬獅郎はそう言うとオレを離した。

「今日はここで泊まるから、雛森か松本の所に泊まってくれ。」

 冬獅郎が一人になりたいのだと、オレは理解していた。
 オレはトボトボと外に出て行き、そして、後ろを振り向くと項垂れる冬獅郎の姿があった。

[*前へ][次へ#]

6/7ページ


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!