橙ネコと氷雪の隊長
5
「一護…一護……。」
「う…みゃ……。」
オレが目を開けるとそこには冬獅郎がいた。
オレはふっと自分の姿が猫であるか慌てて確認した。
「……どうしたんだ?」
オレは誤魔化すように鳴き、そして、冬獅郎に擦り寄った。
「本当に気ままだな、お前は。」
苦笑しながら冬獅郎はオレの頭を撫でてくれた。
「もう、夕刻だぞ。」
冬獅郎の言葉にオレは驚いて外を見たら、本当に空は真紅に染まっていた。
「疲れが溜まっていたんだな。」
冬獅郎は何故か表情を曇らせて、オレの頭を撫でた。
オレはそれが無性に嫌で冬獅郎の指を舐める。
「お前……。」
冬獅郎は何故か悲しそうな顔をして、そして、オレを抱きしめた。
「すまないな……一護。」
何を冬獅郎が抱えてるのか分からなかったが、オレはそれを癒したいと思った。
「……前に…虚退治で…重体に陥った部下がいたんだ……。」
オレはその事を知っていた、オレが来る前に虚退治により彼は傷を負った、確かその部下は今四番隊に居るはずだ、なのに、冬獅郎は過去形で話す。それは二つの意味に取れる。
一つは意識を取り戻して無事退院した事。
もう一つは……死んでしまった事。
多分、冬獅郎のその表情からすると、後者なのだろう。
「俺がもっと…しっかりしていたら…もっと、大人だったら、失わなかったのだろうか……。」
オレは胸が締め付けられた。だけど、何もする事も出来ない。
オレは猫だから、人間のように言葉で励ます事も、冬獅郎を抱きしめる事も出来ない…。
「…………すまないな。」
落ち着いたのか、冬獅郎はそう言うとオレを離した。
「今日はここで泊まるから、雛森か松本の所に泊まってくれ。」
冬獅郎が一人になりたいのだと、オレは理解していた。
オレはトボトボと外に出て行き、そして、後ろを振り向くと項垂れる冬獅郎の姿があった。
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