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悲しき祈り

「「「いただきます。」」」

 三人は手を合わせて、卓の上に乗っている料理に箸を伸ばす。
 本日のおかずは鮎の塩焼き、漬物、豚汁、白米だった。

「……この豚汁美味いな。」
「よかった、母ちゃんの手伝いをした事があったけど、何年も前の話だったから、心配だったんだ。」
「一護ちゃん、だから、大丈夫って言ったでしょ?」
「そうだけど、やっぱりオレの家の味と冬獅郎との味覚が合わない事だってあるだろう?」

 一護の笑みに冬獅郎はもう一度豚汁を飲んだ。

「やっぱりうまい、俺はこの味が好きだな。」

 冬獅郎は珍しく笑みを浮かべた。

「シロちゃん、一護ちゃんを口説かないで。」
「えっ!」
「……。」

 顔を顰める、桃に一護は驚き、冬獅郎は怪訝な顔をする。

「何処が口説いているんだ。」
「何か、「俺の為に毎日味噌汁をつくってくれ。」って言ってるみたいじゃない。」
「……。」

 確かに遠まわしの告白の仕方にそれがあったと、一護は納得するが、それでも、桃の言いたい意味が分からなかった。

「えっと…桃、どうして、そんな話になるんだ?」
「だって、シロちゃんが他人の料理を褒めるなんて滅多にないんだよ。わたしなんて、流魂街にいた時、しょっちゅうシロちゃんに文句を言われたんだよ。」
「雛森、シロちゃん言うな。」
「分かったわよ、日番谷くん。」
「日番谷隊長だっ!」

 何回も「シロちゃん」と言われるのが嫌なのか、冬獅郎は自分の呼び名を注意いしたのだが、桃は決して隊長とは言わなかった。

「はいはい、話が脱線するから、日番谷くんは黙っていてね。」
「……。」

 歯を食いしばり、冬獅郎は怒鳴ろうとする自分を何とかなだめた。

「えーと、何だっけな…そうそう、シロちゃんが料理に文句を言う話だったね。」
「えっ…あ、うん。」

 桃の言葉に一護は戸惑いながらも、頷いた。

「おばあちゃんの料理は特に黙々と食べるだけだったし、乱菊さんが淹れたお茶だって美味しいのに、温いだの、出がらしは止めろだの、文句が煩いんだよ。」
「松本の淹れた茶は正直俺の好みとは外れるんだ。」
「渋いお茶で、しかも熱めのお茶が好きだなんて、本当に日番谷くんの好みって爺くさいよね。」
「放っておけ。」

 一護は冬獅郎の好みを聞いて思わず、彼をマジマジと見てしまった。
 見た目は完全に少年なのだが、桃が言うように確かに何処か年寄りじみた趣味の冬獅郎に一護は純粋に驚いていた。

「ねぇ、一護ちゃんもそう思うよね?」
「えっ?」

 突然話を振られた一護は思わず食べていたご飯を喉に詰まらせてしまった。

「ごほっ!…ごほっ!」
「えっ、一護ちゃん大丈夫!」

 心配する桃は一護の背をさすり、冬獅郎も心配そうに一護を見ながら、少し冷めているお茶を差し出した。

「わ、悪い……。」
「本当に大丈夫?」

 目に涙を浮かべている一護に桃は眉を下げ訊ねた。

「大丈夫だよ、ちょっとご飯を喉に詰まらせかけただけだし。」
「…ごめんね。」
「雛森、少しは黙って飯を食え。」
「……最初に口を開いたのは日番谷くんじゃない。」
「俺は美味いと言っただけだ、それにイチャモンをつけたのは雛森、お前だろう。」
「う……。」
「二人とも、喧嘩はなしでな、な?飯食おうぜ?」

 険悪な雰囲気の二人に一護が割り込み、食事を再開させる。

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