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悲しき祈り

「どういう事なの?」
「…………絶対に誰にも言うなよ。」

 桃は治療を終え、冬獅郎に詰め寄り、冬獅郎はそれを覚悟していたのか、彼女にそう問い、自分が見た事を話した。ただ、彼女が牢屋に捕らえられた事を伏せて。

「…酷い…一体誰が。」

 桃の瞳に怒りの炎が見え隠れする。彼女は正義感が強いので当然と言えば、当然だろう。

「分からない…、だけど、放っておけなかった。」
「当然だよ。こんなに弱りきっているのに……。」
「すまないな、雛森。」
「何が?」
「巻き込んでしまって。」

 しおらしい幼馴染の姿に桃は目を見開いた。

「珍しい……。」

 思わず呟いてしまった言葉に、冬獅郎は剣呑な顔で睨んだ。

「雛森。」
「本当の事じゃない。」
「……。」

 確かに珍しい行動と取ってしまった自覚があるのか、冬獅郎はこれ以上何も言わず、眠っている少女に目を向けた。

「わたしは頼られて嬉しいよ。」
「雛森。」
「という、事で、この子が目を覚ますまで、ここにいるから。」
「……は?」

 桃の言っている意味が分からないのか、否分かりたくないのか、冬獅郎は普段からある眉間の皺をさらに増やした。

「だって、気になるもん。」
「帰れ。」
「ヤダで〜す。」
「帰れよ。」
「いいじゃん、減るもんじゃないし。」

 冬獅郎はこの幼馴染が頑固だと理解しているが、さすがに、幼馴染とはいえ異性を泊めたくはなかった。

「それじゃ、シロちゃんが、この子に手を出さないか、見張るからっ!」

 幼馴染の言葉に、冬獅郎は自分が助けた少女が、女である事を思い出し、確かに女と二人なのは不味いかと思い、何も言えず、それによって、桃に押し切られてしまったのだった。

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