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悲しき祈り
10
 何とか一区切りをつけた冬獅郎は一時報告の為尸魂界に戻った。

「えっ、シロちゃん?」

 目を丸くさせる桃に冬獅郎は眉を寄せた。

「雛森、日番谷隊長だと何度言えば気が済むんだ?」
「えっ?えっ?もっと掛かるんじゃなかったの?」
「……。」

 人の話を聞かない雛森に冬獅郎は嘆息した。

「人の話を聞け。」
「そんな事はどうでもいいでしょ!」
「……。」

 どうでもいい、の一言で片づけられた冬獅郎は何とも言えない哀愁を漂わせるが、桃はその事に気づかないのか言葉を募る。

「もう、早く帰って来れるんならそう言ってよね。」
「……一時報告の為に戻っただけだ、数時間であっちに向かわないといけねえよ。」
「………。」

 冬獅郎の言葉に桃は何故か落ち込んだ顔をした。

「何かあったのか?」
「何もないよ。」
「……。」

 暗い表情を浮かべる彼女に冬獅郎は怪訝な顔をする。

「瀞霊廷事態は何もないよ。だけど、一護ちゃんは……。」
「一護がどうした?」

 鋭くなる冬獅郎の目に桃は一瞬驚く。

「たった、二日だけシロちゃんと離れただけで、一護ちゃん食べる量も減ったし、それに、元気もないよ。」
「……。」
「早く終わらせて帰ってきてよね。」
「そうだな。」

 桃の言葉に冬獅郎は一護が自分に懐いているのだと実感した。

「一護ちゃんに会うの?」
「ああ、始からそのつもりだ。」
「……あんまり一護ちゃんを追い詰めるような事をするのは止めてよね。」
「俺がする訳ないだろうが。」
「……。」

 冬獅郎の言葉に桃は苦笑を浮かべた。

「ほら、さっさと行くんなら行ってよね。」
「……てめぇが引き留めたんだろうが。」

 悪態をついて冬獅郎は一護の霊圧を辿った。

「………本当に二人って不器用だね。」

 可愛い弟分と妹分の姿を思い浮かべ、桃は儚い笑みを浮かべた。

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