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悲しき祈り

 一護を取り敢えず桃の元に預け、現世に来た冬獅郎は任務を遂行していた。
 そして、思ったよりも早くそれが終わり、彼は空座町に向かった。

「……ここか?」

 一護が言っていたクロサキ院を見つけ冬獅郎は遠くからそれを見ていた。
 どうやら未だに人は住んでいるようだ。

「だが…あいつの家族かどうかは分からんな…。」

 冬獅郎は眉間に皺を寄せて、彼女の為の土産話がないか必死で頭を動かす。
 そんな時、家から二人の少女が出てきた。
 一人目は茶色い髪の優しそうな少女。
 二人目は漆黒の髪の勝気そうな少女だった。
 見た目からだと一護とは全く関係のないように見えるのだが、霊圧を探る事の出来る冬獅郎は二人から一護と似たような気配を僅かに感じた。

「………あいつらが…。」

 冬獅郎は元気そのもの少女たちを見て珍しく目元を緩めた。
 一護に良い知らせをもたらす事が出来る。
 冬獅郎は心の底からそう思った。
 しかし、そんな考えはすぐにかき消される。
 双子の片割れの霊圧が一護よりは劣るが、それでも、一般人よりは遥かに強い力を感じ取ってしまったのだ。
 今はまだ子供なので、いつか自然に力が衰えていくかもしれないが、それでも、一護を見ていればその可能性が限りなく低いように思えた。
 冬獅郎は眉を寄せながら考えた。
 本当は面倒な事には首を突っ込みたくはなかった。
 だけど、この二人は一護にとっては唯一無二の家族であり、彼女にしては生きている間に逢えない存在なのだ。
 冬獅郎は溜息を吐いた。
 いくつか方法があるが、それでも、己の力を関与させればどうなるのか分からない。
 うまくいけば彼女たちの霊圧を隠す事ができるかもしれないが、万が一通常では考えられないほど強い虚と出会えば間違いなく彼女たちと異なる霊圧に感づかれるかもしれない。
 そうなれば、厄介な事になるだろう。
 だから、冬獅郎は早くこの任務をひと段落させ、いったん尸魂界に戻る事を決意する。
 戻れば、双子と異なるが、それでも、冬獅郎よりもずっと違和感なくまじりあえる霊圧の主がいるのだから。
 冬獅郎は急ぐためにも、その場から立ち去った。
 この時、何かを感じた黒髪の少女が顔を上げ、冬獅郎のいた方向を見ていたのだが、その事に冬獅郎は気づいていなかった。

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あきゅろす。
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