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悲しき祈り

「母ちゃんっ!」

 少女が血塗れで倒れこむ母の前に行くが、母はもう虫の息だった。

「母ちゃん!」

 少女の悲痛な声は雨の音によって掻き消されていた。

「い……ご、…い…じょ…ぶ?」
「母ちゃんっ!」

 少女は母にしがみつき、母は最期の力を振り絞り、彼女の手を握ろうとしたが、そこで力尽きた。

「母ちゃぁぁぁぁぁ―――――――――――んっ!」

 少女は叫びと共に霊圧を放出した。

「へ〜、こないな子があんな霊圧を出すなんて、凄いですな、藍染隊長。」
「ああ、これで、崩玉が完成するだろうね、ギン。」
「――っ!」

 見知らぬ声に少女は体を強張らせた。

「お、お前ら…は?」
「おや、僕らの姿が見えるん?」
「成程、興味があるね。」
「……。」

 少女の目に二人の男の姿が映っている。
 こんな酷い雨だというのにも関わらず、二人は傘を差しておらず、縁日などでしか見ない着物を着込んでいる。
 しかも、その着物は真っ黒で、その上に真っ白な羽織を着ていた。

「藍染隊長、お時間ではありませんか?」
「…そのようだね。」

 藍染と呼ばれた男は眼鏡を掛けており、その奥の目はゾッとするほど冷たく少女の体は萎縮した。

「ギン、その子どもを。」
「分かりました。」

 ギンと呼ばれた男は少女のオレンジの髪に負けずを取らずの目立つ色合いを持つ、その髪は銀色で目は狐のように細く色は分からなかった。

「く、来るなっ!」

 少女は逃げようと思うが、脚がガタガタと震え、逃げる事どころか立ち上がる事すら出来なかった。

「……やっと、完成する。」

 少女は子ども独特の甲高い悲鳴を上げ、その意識を閉ざした。

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