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悲しき祈り

 あまりにも綺麗に微笑む一護に冬獅郎は言葉を失った。

「冬獅郎のお陰でオレは外に出たいと思った。そして、出る事が出来たんだ。」

 冬獅郎は言葉を捜すが、天才と呼ばれた頭はまるで壊れた機械のように何も言葉が出てこなかった。

「桃もありがとう。」
「えっ?」

 行き成りお礼を言われた桃は目を丸くさせた。

「わ、わたしは何もしてないよ。」
「ううん、桃が居てくれたから。冬獅郎と一緒に居ても気まずくなかったんだ。」
「一護ちゃん。」
「だから、ありがとう。」

 桃は少し後ろめたくなった。
 こんなにも一護は自分を信頼してくれるのに自分は彼女の言葉を信じられないでいたのだ。

「お礼何て言わないで。」
「桃?」

 肩を震わせる桃に一護は自分が何か彼女の気に触る事を言ったのではないかと不安になる。

「ご、ごめん、オレ何か気に触る事を言った?」

 一護の言葉に桃は首を横に振った。

「ううん、違うの。」
「桃?」
「こっちこそごめんね。」

 一護は逆に謝られ、目を丸くさせた。

「えっ、何で。」
「あたし…一護ちゃんの言っている事を信じられないの。」
「……。」

 一護は何もかも分かっているかのように柔らかく微笑んだ。

「仕方が無い事だよ。」

 そう仕方が無い事、一護だって分かっている、行き成り現れた少女と長年尊敬していた上司、どちらを信じるかと聞かれたらきっと上司だろう。

「桃が桃の信じる道を行けばいいよ。」
「だけど…。」

 桃はずっと信じていた上司に対しわずかにだが黒い何かが広がりつつあった。

「オレは桃が桃らしく居てくれればそれでいいよ、オレの事で自分を偽ったり、殺したりするのは嬉しくないから。」
「一護ちゃん。」

 自分よりもずっと年下の少女はまるで自分よりも長く生きているかのように全てを悟っているようだった。

「雛森。」
「何?」
「俺はお前には悪いが藍染を疑う、もし、お前が一護を害するのなら…、悪いがその時は十番隊の牢に入れさせるからな。」
「……。」

 桃は幼馴染の少年は優しいと思った。
 もし、本当に自分が敵になったとしても、彼は幼馴染である桃を傷つける事が出来ない、だから、彼女が動けないように閉じ込める事しか出来ないのだ。

「大丈夫、一護ちゃんは親友だもん。」

 そう、上司は信じているけど、一護にだって信頼を寄せているのだ。

「だから、傷つけない。」
「そうか。」

 冬獅郎はどこか安心したかのようにそう言うと、今日のところはお開きとなった。

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あきゅろす。
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