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悲しき祈り

 冬獅郎は己の唇を噛んだ。
 血の味が口の中に広がるが、冬獅郎は気にしていないのかそのまま唇を強く噛み続けている。

「シロちゃん。」
「……。」
「何で一護ちゃん。」
「詳しく聞かないと分からないが、もしかしたら、こいつを連れてきた奴に関連する記憶が呼び起こされたのかも知れねぇ。」
「……悪い事しちゃったな。」

 本当に心から悔やんでいるのか桃は悲しそうな顔をしている。

「……こいつを連れてきたのが護廷の中の誰かならそうは言っていられない。」

 冬獅郎の言葉に桃は目を丸くさせる。

「疑っているの?」
「……。」

 冬獅郎は無言でいるが、桃はそれを肯定しているのと同じだと分かっていた。

「…藍染隊長を疑っているの?」
「………。」
「――っ!藍染隊長はそんな酷い事をする人じゃないよっ!」

 桃は顔を真っ赤にさせ、そして、思いっきり手を振り上げ、冬獅郎の頬を平手打ちした。

「シロちゃんの馬鹿っ!」

 冬獅郎は桃が出て行った扉をじっと見たまま溜息を一つ吐いた。

「俺だって疑いたくはない…だが…。」

 冬獅郎の脳裏に初めて一護と出会ったあの場所、あの時の一護の姿を思い出し、胸が締め付けられた。

「……こいつをああした奴を許してやるほど…俺は護廷の連中なんてどうでもいいんだ、それがたとえ、幼馴染の想い人であってもな。」

 冬獅郎はこの時、この瞬間から藍染を敵視し始めたのだった。

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