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悲しき祈り

 冬獅郎と桃の稽古は夜が更けてから始まる。

「一護、今日は白打の練習だ。」
「ああ。」

 一護は桃の死覇装を借りて、冬獅郎と向き合う。

「来い。」
「はあああっ!」

 一護は手足に霊圧を込め、体術と組み合わせて、冬獅郎に殴りかかる。
 隊長になるだけの実力の冬獅郎は一護の攻撃を難なくと受け止めるが、実際席官クラスだと多分一護の方が勝っているだろう。

「一護、脇が甘いぞっ!」
「――っ!」

 一護は冬獅郎に反撃され、それを受け止めるがかなりそれは重く、彼女は顔を顰めた。

「戦いならば死んでいるぞ。」
「くっ!」

 一護は次の冬獅郎の攻撃を何とかかわし、そして、拳を突き出す。

「動きが単調すぎる。」

 冬獅郎は必要最低限の動きで一護を追い詰める。

「はい、ストップ。」

 急に止められ、一護と冬獅郎は同時に動きを止め、声がした方を見た。

「何だ雛森。」
「はぁ…はぁ……。」

 肩で息をする一護を見て冬獅郎は何故桃が止めたのか悟った。

「……シロちゃん、幾ら自分が小さいなりをしてても、一護ちゃんは女の子なんだよ。」
「…すまない。」

 冬獅郎は桃の言葉に少し苛立ちを覚えるが、それでも、彼女のいう事はもっともなので謝罪の言葉を述べた。

「いや…オレが…体力なさすぎるんだ……。」
「……お前は長い間閉じ込められていたんだ。体力が落ちていて不思議は無い。俺がその辺の事を考慮していなかった事がいけないんだ。」

 冬獅郎はそっと一護の額から流れる汗を袖口で拭う。

「シロちゃん、汚い。」
「仕方ないだろう、手ぬぐいを忘れてきたのだからな。」
「はぁ。威張る事じゃないでしょ。」

 桃は溜息を一つ零し、持ってきた風呂敷から手ぬぐいや飲み物を取り出した。

「準備がいいでしょ?」
「……。」
「ありがとう、桃。」

 一護は桃から手ぬぐいと水を貰った。

「シロちゃん、一護ちゃんは女の子なんだし、そんな本気で稽古しなくてもいいじゃない。」

 冬獅郎は桃の言葉に溜息を吐き、言葉を紡ごうとするが、それよりも早く一護が口にした。

「桃、いいんだ。これはオレが冬獅郎にお願いした事なんだ。」
「一護ちゃん?」
「オレはあんたたちを護りたい、だけど、あんたたちの方が強い……。だから、冬獅郎には自隊の隊士と同じように稽古をつけて欲しいって頼んだんだ。」
「……それじゃ、いつか怪我するよ。」

 桃は悲しげに目を伏せた。

「いいんだよ。それにオレあっちに居た時は空手を習っていたし、生傷なんて今さらだしな。」

 初めて話に桃と冬獅郎はそれぞれの反応を見せる。

「一護ちゃん空手習ってたんだ。」
「そうか、だから、白打が打てるのか。」

 冬獅郎は一護の成長の早さが普通よりも群を抜いている事に気づいていたが、それが元々の体術の基礎があるからだと、今気づく。

「冬獅郎、休憩は終わり、もう一度頼む。」
「ああ。」

 一護は礼を言って桃に水と手ぬぐいを預けた。

「一護ちゃん、シロちゃんなんて伸してしまえっ!」

 応援をする桃に冬獅郎は怒鳴る。

「雛森さっきから人が聞き流しているのに、何さっきから「シロちゃん」を連発しているんだっ!」

 冬獅郎の怒声が響き渡り一護はそれを聞き苦笑を浮かべ、桃はカルシウム足りてないんじゃないかと考えるのだった。

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あきゅろす。
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