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定めを覆せ

「………時が満ちつつあるか。」

 漆黒の闇の中に明るい白銀の光があった。

「隊長。」
「…………。」

 己の部下に呼ばれ振り返る冬獅郎は口元にあくどい笑みを浮かべていた。

「いいんですか?」
「別に問題はないだろう?」
「そうかもしれませんが、わざわざあの二人じゃなくとも。」
「あの二人が適任だろう?」
「……。」

 乱菊は溜息を零し、己が隊長を見る。

「もっと当たり障りのない人でもいいでしょうに。」
「大丈夫だ、あの程度であいつがどうなるはずもねぇ。」
「……。」

 乱菊は溜息をまた零し、肩を竦めた。

「本当に隊長は変わりましたね。」
「そうか?」
「ええ、昔の貴方でしたら、間違いく綿で包むように大切にしていたのに、今はなんですか…。」
「心外だな、俺は変わってねぇよ。」

 冬獅郎はそう呟くと外に浮かぶ月を見る。

「変わってねぇよ。」

 その眼に狂気にも似た光を宿している事に、月だけが気づいていた。

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