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天上華

 翌朝、冬獅郎は朝早く家を出た。
 そして、その横には一護がいた。

「行って来る。」
「行ってらっしゃい。」

 まるで初々しい夫婦のような雰囲気を放つ二人だが、実際、彼らは己の気持ちに気づいていない。

「もし、何かあれば、すぐにでも知らせてくれ。」
「大丈夫だよ、冬獅郎こそ、気をつけろよ。」
「ああ。」

 名残惜しそうに話す二人は、刻々と近づく別れに気づいていた。

「冬獅郎。」
「何だ。」
「無理しないでくれよ。」
「お前こそ、ちゃんと寝ろよ。」
「うん。」
「一護。」
「何?」
「俺を選んでくれてありがとう。」

 冬獅郎がふんわりと微笑むと、一護は顔を真っ赤にさせた。

「休みをもぎ取って、帰ってくるな。」
「あっ、うん…。」
「行ってくる。」

 妹と同じくらいの年頃の少年しか見えない、冬獅郎の背中は一人の男の人のものだった。
 堂々とした足取りは少しずつ、一護から離れていく。

「冬獅郎っ!」

 数十歩離れた時、一護は叫んだ。
 驚いて振り返る冬獅郎に一護は泣き笑いを浮かべる。

「待っているからなっ!」
「ああ。」

 冬獅郎は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑みを浮かべ、歩き出す。
 一護は冬獅郎の姿が見えなくなるまで彼の後姿を見送った。4

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