天上華 4 翌朝、冬獅郎は朝早く家を出た。 そして、その横には一護がいた。 「行って来る。」 「行ってらっしゃい。」 まるで初々しい夫婦のような雰囲気を放つ二人だが、実際、彼らは己の気持ちに気づいていない。 「もし、何かあれば、すぐにでも知らせてくれ。」 「大丈夫だよ、冬獅郎こそ、気をつけろよ。」 「ああ。」 名残惜しそうに話す二人は、刻々と近づく別れに気づいていた。 「冬獅郎。」 「何だ。」 「無理しないでくれよ。」 「お前こそ、ちゃんと寝ろよ。」 「うん。」 「一護。」 「何?」 「俺を選んでくれてありがとう。」 冬獅郎がふんわりと微笑むと、一護は顔を真っ赤にさせた。 「休みをもぎ取って、帰ってくるな。」 「あっ、うん…。」 「行ってくる。」 妹と同じくらいの年頃の少年しか見えない、冬獅郎の背中は一人の男の人のものだった。 堂々とした足取りは少しずつ、一護から離れていく。 「冬獅郎っ!」 数十歩離れた時、一護は叫んだ。 驚いて振り返る冬獅郎に一護は泣き笑いを浮かべる。 「待っているからなっ!」 「ああ。」 冬獅郎は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑みを浮かべ、歩き出す。 一護は冬獅郎の姿が見えなくなるまで彼の後姿を見送った。4 [*前へ][次へ#] [戻る] |