短編
居残り授業。【おお振り/阿部】
「おい、よそ見せずにやれ」
『は、はい…!!』
…阿部君は鬼である。
事の始まりは数時間前の数学の時間。
以前行われたテスト返し。
そのテストで赤点を取ってしまった私、西浦高校野球部マネジ、水桐さくら。
そんな私に志賀先生が、
「水桐。今日は部活ないし、放課後阿部に教えてもらいなよ」
なんて言うもので。
ただいま阿部君と居残り授業の真っ最中です…。
居残りはいいんだけど…
「おい、さっきから手止まってるぞ」
「そこさっき教えたばっかだろ」
…なんて睨みながら言う阿部君が怖いです…。
「おい」
野球部の中でも阿部君は私の中で苦手な方に入っちゃうんだよなぁ…
「…おい」
嫌いってわけじゃないけど…優しい時は優しいんだけど、怒ると怖い…。
「おい、聞いてんのか!」
『き、聞いてますごめんなさい!!』
「ぜってー聞いてなかっただろ…」
『うっ』
「はぁ…」
や、やばい…阿部君を怒らせてしまった…!!
どどどどどどうしよう…!!
「お前さ…何でこんな数学出来ねぇんだよ」
『え…?』
お、怒ってない…??
……いや、絶対怒ってる!!だって眉間に皺が…!!
「数学なんて公式覚えれば簡単だろ」
え、公式覚えても私には無理です…!!
『む、無理です…』
「は?」
み、眉間の皺が深くなった…っ!!
本当どうしよう怖い、怖すぎる…!!
「なんで無理なんだよ」
『え、と…』
「どもらず言えよ」
『す、数字が並んでるだけにしか見えなくて私には意味が分らないです…!!』
「…」
言えたけど…阿部君呆れてるだろうな…。
なんでこんな馬鹿なんだコイツって思ってるよな…。
「よし、休みの日に教えるか」
『やっぱそう思うよね…え!?』
「なんだよ…」
『え、今なんて…!?』
「休みの日に数学教えるってんだよ」
まさかそう言ってくれるとは思わなかった…。
『な、何で…??』
「マネジとはいえ試合出ないからって赤点取っていいわけじゃねぇだろ」
『!!』
「だから休みの日は勉強すんぞ」
『うん…!!』
(つーかお前馬鹿だよな)
(うっ…!!)
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