DON'T SAY ANYTHING 1 (R15くらい) 「…やァだ…っ」 いつもどおりの形ばかりの抗い。白いうなじに汗が光る。 顔を近づけて舌先で舐めてやると。 「ひじ、かたさ…やめッ…」 無理に出した声がとぎれて、つっぱねようとしていた手の力も抜けた。 ああ、なんでこんなに煽るんだろう、コイツは。 わざと顔を見ないように肌に唇を這わせていたが、とうとう我慢出来ずに顔を上げた。 いつものキツイ輝きが失せ、そのかわりに熱っぽい澱んだ影が見える瞳。 ゾクッとした。 「総悟」 こうしてコイツと肌を重ねるようになってから、かなり経った。 最初は身体を硬くしたままで、なかなか受け入れられなかったコイツを、自分の色に染め上げたようで、ちょっと・・・いや、かなり嬉しい。 きめ細かな、なめらかな皮膚に紅く痕をつけながら舌先で弄ると、総悟は懸命に声を殺していた。 「お前、食いたくなるな」 「…っるせ、ッ…」 さっきさんざん指で捏ね回して、ピンと紅く主張して硬くなった飾りを中心に、胸を噛みつくように愛撫する。 相当感じているらしく、総悟のだらりとたれていた手が俺の頭を抱き、髪を掴んだ。 その反応を快く思いながら下肢へと手を伸ばす。 指先で形をなぞり上げると、腰がビクと跳ねた。 「疼くか。感じてんだろ?」 そう意地悪く訊ねると、総悟は小さなため息を吐いて、手を離した。 微かにかぶりをふってみせる。 本人は否定したつもりらしいが、唇からのぞく舌先が誘うように動いた。 俺の熱もどんどん高まっていく。 でも。 コイツはずるい。 いつだって、都合の悪いことは口にしない。 「なぁ言えよ、総悟。何が欲しいか」 「え…な、に?」 一瞬、訳がわからないというように訊きかえしてきた。 「俺に何して欲しいのか、教えろよ」 あえて冷たい口調で言い放つと、一瞬、総悟の頬がカッと紅く染まった。 それを見取ってもう一度言う。 「疼くんだろ?欲しいんだろ? なら、そう口にして言ってみな」 「土方さ…っ、んな、こと」 総悟は切なげに眉をよせて、俺を見上げ、首を左右に振った。 ヤバイ。 腰から這い上った痺れるような感覚。 首筋にゾクっと感じて、ふらっとしかけた。 これはマズい。 自分でも、なんでこの状況で言わせたいのか分からない。 もしかしたら、単に俺の方が逆上せあがってるだけかもしれない。 が、ひっかかるのだ。 今日に限って、総悟の態度が。 いつだってこうして誘うのは俺で、総悟はそれを受け入れてる。 コイツの本心は、どう思ってるんだろう。 俺のことを何だと思っているんだ? 誰にでも愛想を振りまくヤツじゃない。それは当たり前とわかっているけれど…。 夢を見ているのは、何よりコイツが必要なのは、俺だけなのかもしれない。 「総悟、挿れて欲しい、って言ってみろ。 そうすりゃ、オマエの好きなことしてやる」 「…っ…アンタっ」 かすれた声が熱となって耳をくすぐり、背中に響いた。 総悟は横を向き、目を閉じて唇を噛み締めている。 俺だっていつもなら我慢の出来る状態じゃないけれど、今回ばかりは必死に踏みとどまった。 コイツの速い息をしばらく聞いていたが、ややあって、総悟のいやにきっぱりした声がした。 「……は、ッ」 「何だ?」 「…っ死ねっエロ土方! ふざけんな!アンタいい性格してやすねッ!」 自分勝手なことはわかっているが、こうなると俺も引くに引けない。 「どっちがだ」 「へっ!焦らして喜ぶなんて、なんつー悪趣味なんでィ!」 「んじゃ、いい趣味のヤツとやりゃいいだろうが!」 「ああ、そうしまさァ! 今のアンタと寝るくらいなら、死んだほうがマシでィ!!」 …心臓がギリッと音を立てて痛んだ。 そのまま、肌蹴た寝巻きの前を掻き合わせるようにして、総悟は部屋を飛び出した。 俺は、総悟の後姿を見ることも出来なかった。 『殺す』だ、『死ね』だ、とは何度も言われた。 でも…。 「死んだほうがマシ…かよ」 口の中に苦いものが広がった。 → [*前へ][次へ#] [戻る] |