一夏の思い出 4 今度目が覚めると、気分がやけにスッキリしていた。 熱が下がったんだ、と寝返りを打つと、目の前に眠っている土方さんのどアップが飛び込んできて。 しかも・・・・・・かろうじてパンイチの裸だ! 二人とも!! ギャー!!!!!!! うわわわわ!?!?!?! 「ひっ、土方さんッ、なっ、コレ!?」 ベッドから起き上がり、パニックを起こして騒いでいる俺に気がついて、土方さんが目を覚ました。俺を見て、ニヤッと笑う。 「ああ、よかった。元気になったみたいだな。身体、痛くねえか?」 「な、な、なんなんでさァ、なにをしたんでィ!?なんで、俺たち裸なんでさ!!!」 「え?」 「え?じゃなくてっ、なんでっ!?」 「・・・覚えてねえの?」 びっくりしたような神妙な顔でゆっくりと起き上がって、逆に俺を見つめ返してくる土方さん。 「覚えて、って・・・?」 なんか、スゴク不安になってきて、コクンと唾を飲み込んだ。 おそるおそる土方さんを見上げると、なんだか不気味に微笑んでいる。 「責任とってくれよ、総悟」 「せ、・・・きにん?」 「ああ。責任」 「せ、責任って・・・責任取るのはアンタの方じゃねえんですかィ!?俺に何をしくさったんでィ!?俺、初めてだったのにッ!」 ああ、なんだか訳のわからないことになっている。 パニくって叫びながら、不安な面持ちのままで土方さんを見つめる、俺。 土方さんは普段見せない顔でニッコリと笑った。 「もちろん、俺は喜んで責任をとる。 でもな、総悟。俺ももうお前無しでは生きていけない体になっちまったんだ。 だから、ずっと一緒にいてくれ」 また、訳のわからない事をこいつは晴れ晴れとした顔で言った。 クソヤロー死ね!と叫ぼうとしたが、あまりのことに声が出ず、口をパクパクさせるしかない。 その上、口調とは別の土方さんのあまりに真剣な面持ちに、俺の頭はまともに働かなくて、真っ白で。 気がつくと、なぜか、コクコクと頷いてしまっていた。 結局、この時はまだ何も無かったようだ。 (裸だったのは、俺が思いっきりリバースして服をダメにした挙句、土方さんにしがみ付いていて身動きとれなくて、そのまま二人して寝てしまったらしい) とにかくこの日から、俺たちの新しい関係が始まったのだ。 空が、青く、高くなった。 秋はもう来ている。 「総悟、この夏の二人きりの思い出が、こんな酷い風邪だけなんて残念だったな。 馬鹿は風邪ひかねえって言うけど、夏風邪はバカだけがひくんだって知ってるか?」 なんだか嬉しそうに失礼な事を言う土方さんを見つめながら。 「夏風邪じゃねェでさァ・・・もう秋でィ、あーきー」 「そーゆー事にしておいてやるよ」 「うっせーです。 風邪なんかより、もっとタチが悪いものにとりつかれちまったぜィ」 呟く。 「はっ、上等だ。一生離れないからな」 土方さんは嬉しそうに笑って、俺を抱きしめる。 彼と二人で過ごす秋が始まっていた。 end [*前へ][次へ#] [戻る] |