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アンドロイド総悟は電気羊の夢を見るか? 4





金縛りから最初に解けたのは、山崎だった。

「ひっ、土方さんッ!!あんた、こんな子供、連れ込んでっ!!犯罪ですよ、犯罪ッッ!!!」
「いや、これはっ・・・!ちょっ待て!!」
「なんで、こんな可愛い子をどこでっ!?ってか、いっくら自分がモテるからって未成年まで手ェ出すなんて、外道ですーーっ!!」

俺に飛びつかんばかりに、山崎はがなり立てる。
その時、俺の背中に手を回したままの総悟が、顔を上げて抑揚のない声で山崎に言った。

「まーまー落ち着きなせィ。俺、機械なんでさ」

へっ?と山崎は動きを止めた。
総悟を見つめる山崎に、総悟は自分の首筋のタトゥーを指差して見せた。

「正真正銘、本物のカラクリでさァ」

しばらく総悟の顔と首元を交互に見て、口をポカンと開けていた山崎は、ハッと我に返った様にまた怒鳴りだした。


「ひっ、土方さーん!あんた・・・っ!!」
「うるせえ!!今度はなんだッ!?」
「あんた、女に不自由はしてねえ、なんて言っておきながら、セクサロイドなんて買っちゃったんですか!?そんな大金持ってるなら、煙草代くらいとっとと払って下さい!信じらんない!!」
「ちげーーーよッ!!!テメ、何言・・・ッ!!」
「見損ないましたよーーッ!」
「うるせえ!!違うって言ってんだろうが!!」

山崎を一発殴ろうと、拳を上げかけた時だった。


「アンタたち、ちょっと黙りなせィ」


総悟は、手を伸ばしてギャーギャーわめく山崎の口を塞ぎ、もう片手で俺の襟元を掴んでグイと引っ張ると、俺の口を唇でもって塞いだ。

総悟の唇は、機械と思えないほど柔らかく温かかった。










「まーまー、茶でも飲んで、ゆっくり話しましょうや」

いつの間にかその場を仕切っている総悟は、さっさとソファーに座ると、俺と山崎と自分の前にお茶を置いた。
先ほど淹れてたお茶は、騒ぎの間のドサクサで零してしまったので、俺が淹れ直した物だ。
総悟は、カップを取ってコクンとお茶を飲んだ。まるっきり人間に見える。
山崎はそんな総悟を、目を丸くして見ている。
総悟は、そんな山崎の方をチラとも見ずに、俺に言った。


「あーあ、とんだ邪魔が入りやしたね。色仕掛け、失敗しちまったぜィ」
「総悟?」
「土方さん。さっきの、山崎が言ったコト、あながち間違っちゃいねェんですぜ」
「「へ?」」

間抜けた声を出す俺と山崎に、総悟は、俺にはちゃんとセクサロイドの機能もついてやす、試しますかィ?と何でもないように言った。
なぜか、俺よりも山崎の方が慌てて、立ったり座ったりとアワアワしている。

「手ェ出してくれても構わなかったんでさァ。さっきと違って、俺ァ冷たくはなかったでしょ?体温、上げといたんで」

確かに、擦り寄られたときも、口を塞がれたときも(キスとは言いたくねえ)、コイツは温かかった。

だが、そんな事よりも・・・引っかかった事がある。
俺は、ソファーから立ち上がり、横に座る総悟から数歩分の距離を置いた。



「んなことより、総悟・・・」
「へい」
「なんで山崎の名前知ってる?」

さっき、公園で偶然会って、たまたま連れ帰っただけの機械が。

「ひぇッ、土方さ・・・っ!」
「動くな、山崎。後ろからズドン、じゃ洒落にならねえ」

部屋の空気がビリッと凍った。
山崎は向かいの席から半分腰を浮かせて、怯えの混じった瞳で身構えている。

「何モンだ、テメエは」

俺は総悟を睨みつけて、言った。
総悟は、寛いだままの様子で、またお茶のカップを手に取った。
俺と山崎の緊迫した空気なんてまるっきり感じないように、ズズズ、と音を立てて茶を啜る。
飲み終わったマグを見つめながら、指でチンと弾いた。


「あー、そこんトコ、正解です。気づいて貰えてよかったでさァ。スルーされたら帰ろうと思ってやした」
「・・・・・・」
「実ァね土方さん、アンタの事、張ってたんです。まさか、お持ち帰りして貰えるたァ思いやせんでしたけど」
「総悟・・・俺の質問に答えろ」


山崎が、総悟を伺いながらそろそろと俺の後ろに移動してくる。

機械は人間に手出ししてはいけない、という規則はある。大昔に作られたロボット法だ。
が、それがキチンと法律として守られているかは疑問だ。
この状態で、機械と素手でやりあって、勝てる見込みは無い。

総悟はやっと、俺の方を見た。

「何者だ、テメエ。何の目的で俺に近づいた?」
「機械でさァ。名前は、オキタソーゴ。ええっと目的っつーか・・・」


ゴクリ、と生唾を呑む音がした。
俺か、と思ったら山崎だった。
まぎらわしい。


「お願いがあるんです。土方さん」


総悟の綺麗で無表情な顔を見つめながら。
ゴクリ、と。
今度は俺の喉がなった。










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