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Triangle 3






1年経って。
何故だか、一緒に暮らしている。

あれから、何を近藤さんに聞いたんだか知らないけど、一人で大丈夫かとか電話がかかってきたりメールが来たり、学校帰りに待ち伏せされてどっか連れ出されたりした。
近藤さんと会うときにも、なぜか不要な土方さんまでくっ付いて来た。
なんか有耶無耶のうちに流されて、いつの間にかちょっとセックスしちゃったりとか、イロイロあった。
でも、ホントにそんなもんで、俺は俺でおねーちゃんに恩返しするためのバイトと、おねーちゃんに行かせてもらってる大学で忙しくしてたし、アッチはアッチで俺と会ってるときにも、女からの電話が頻繁にかかってきたりしてた。





土方さんに、一緒に暮らさないかと言われたのは、また半年くらい経ってからだった。
あの人の部屋に誘われてやることやって、コトの後に終電の心配をしながらシャワーして、急いで身支度してると、総悟、と呼ばれた。


「ちょっ、もう時間ねーんで」
「車で送ってやるから、ちょっと話聞けよ」
「今日、飲んでねェの?」
「ああ」

送って貰えるんならいいや、と俺は頷いた。
そこ座れ、とソファーを指差されて座ると、土方さんは横に座って煙草を取り出し、一服しだした。
何の話だろうとジッと土方さんを見てるけれど、目を合わせてくれないまま一向に話し出す気配が無くて、煙草は2本目になった。
話はしねェのかな、と溜息をついたら、総悟、と呼ばれた。

「ここで、俺と一緒に暮らさねえか?」
「ほぇ?なんで?」

素っ頓狂な声で訊いた俺に、身体の相性がいいみたいだからな、と土方さんの答えが帰ってきた。
言われてみれば、確かに土方さんのセックスは結構気持ちよかった。

「どうだ、総悟。うちからの方がお前の大学も近いし、今みたいに終電の心配もいらねえだろ?連絡する手間も省けるから」
「あー・・・」

確かに、それはそうだ、けど。

「家賃は?」
「いらねえよ。未成年にたかるほど不自由してねえ」

んー、タダか。そりゃ魅力だなァ。
まァ、いいっか。
と、その時は単純に軽く思った。


土方さんのマンションは、俺の住んでるボロアパートとは比べ物にならないくらい、広くて快適だったのだ。近くの駅にも、俺の大学にも近かったし、セキュリティもしっかりしてた。
それに、家賃が浮けばその分だけ、嫁に行ったお姉ちゃんと義兄さんに恩返しするお金が貯まる。
何か言われたら、近藤さんの知り合いとルームシェアだって言えば、安心してくれるだろう。
それ以上の深い理由は俺にはなかった、多分。


俺と土方さんは、一応一緒に暮らしてやることもかなりヤってたけれど、俺はたまに大学の友達とも遊んでたし、アッチはアッチで女の影がホントに数え切れないほどあった。
俺は、このほうが都合がいいから土方さんと暮らしてた。
あれやれ、これしろと口煩い所はあるけど、俺が何もしなくても仕方ないと思われてる所もあって、喧嘩しても一瞬のことだ。
結局、広くて居心地のいい家で、稼ぎのいいあの人に生活の面倒までみて貰ってる。

出席日数分は真面目に学校行って単位を取って、バイトで稼いでお金貯めて、土方さんと寝て、ごくたまに外で他人と遊んでくる。
立場的には、これも『ヒモ』とか『援交』とかに入るんだろうか?


だけど、解んないのは土方さんの方だ。
俺が考える限り、土方さんが俺と暮らすメリットは、ほとんど何もない気がする。
家事も何もかも、土方さんのほうがキッチリしていて、俺はあんまり役に立ってなんかいない。
強いて言えば、洗濯機任せの洗濯と、自分の部屋の掃除くらいはしてる。

いくら身体の相性がいいとか言っても、土方さんはずっと俺一人と一緒にいるよりも、一人で気ままに暮らしてるほうがよっぽど楽しいんじゃないかと思う。
俺がいたら、気に入った女も連れ込めないし、そっちのほうが迷惑だろう。
そう思って、土方さんに訊いてみたけど『そんなこと、お前が気にすることじゃねえ』と言われた。
首をかしげながらも、そんなもんかと思って、もう深くは考えなかった。






最近、なんだか土方さんとうまくいってない。
原因は多分、俺にある。
だって、俺は考え出してしまった。
さっきみたいな、くだらないコト。


「好き」って何だろ?


今どきの小学生でも知っていそうなことが、俺にはわからない。
それなのに、考える事を止められない。
普段、頭を使ってないから、その反動が来ちゃったんだろうか。
いっくら考えたってわかんないってことは、どっかのネジが、1本抜け落ちてんだろうか。
多分、答えを見つけるまで、考えることが止まらないんだろう。
ぐるぐるぐるぐる。
出口のない迷路。


土方さんを好きか、と訊かれれば、嫌いって訳じゃねェと思う。
愛してるか、と訊かれたら、そんなのわかんねェとしか言いようがない。
俺にはどんな感情が『恋』なのか『愛』なのかわからない。
今まで、こんなこと一度も考えた事が無かったのに・・・。






ただ。
なんで、今更こんな事を考え出してしまったのかだけは、わかる。


あの人に・・・・・・旦那に逢ってしまったからだ。











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