KISS 2 「それでね、俺ァ土方さんがキスが上手いかどうかなんてわかんねェから、直接訊いてみようと思ったんでさァ。アンタ、本当のところどうなんです?」 そういう事はあまり本人に訊くものじゃない・・・と総悟に言っても、それなら誰かに訊くと他のヤツの所に行かれたら余計困る。 他の奴等だって、俺のキスが上手いかどうかなんて訊かれたって答えられるものじゃない。 土方は少し頭が痛かったが、期待のこもった総悟のキラキラした瞳を見て考え直すことにした。 総悟が素直に聞いてくるなんて、こんなことでもなければ滅多にある事じゃない。 かなり、クラクラするほど可愛かった。 「お前は俺とキスするのは好きか?」 「ほぇ・・・!?」 煙草の煙をふーっと吐き出してから、土方は総悟に逆に訊いてみる。 総悟はガバッと起き上がると、みるみる頬から耳のほうまで真っ赤に染まった。 「う・・・そ、そんなのっ・・・カンケーねえでしょう」 土方はニヤリとして、言いよどむ総悟に駄目押しでもう一度訊く。 「あるだろ」 「・・・そ、そんなん・・・知りやせんっ」 「どうだ、総悟?俺とやるのは好きか?」 「・・・そ・そりゃ・・・その・・・キライ、ではねェ、ですけど」 「俺としてて気持ちいいか?」 「・・・えええ・・・えっと・・・悪くは・・・ねえ、かも?」 「じゃあ、そんなに下手じゃねえと思うけどな」 「そ、そうですかィ!わかりやした。上手いんだ土方さん」 納得したらしい総悟に、土方はホッとしながらもちょっと苦笑を浮かべる。 そうだったんですねィ、よかったよかった。と妙に頷いている総悟を見て、土方はちょっと考え、煙草を灰皿に押し付けて口を開いた。 「なあ総悟。今の会話って、キスを強請(ねだ)られてる気がするんだけどな?」 「へっ・・・!?」 一瞬、きょとんとした表情になった総悟は、言葉の意味を掴むとカアア〜〜っと先程よりも真っ赤になった。 「ちっ違いまさァ!!俺はそんなつもりじゃ」 「ふ〜ん。そう聞こえたが、俺とはしたくねえのか」 「や、その・・・そうじゃねェんですけど」 「じゃ、してえのか?今、してもいいか?」 体ごと総悟に向き直って、土方は指でコイコイと招いた。 「・・・ダメだっつったら、しねえですかィ?」 「いや、する」 「うー・・・あー・・・」 総悟はあちこち飛ばしていた視線を土方に合わせると、上目遣いで唇の端でちょっとだけ笑った。 幼さの残る貌が、一瞬だけ妖しさを増して・・・土方は思わず見惚れる。 「・・・仕方ねえなァ、土方さんは。なんてダメな大人でさァ」 完全にコイツに振りまわされている自分がなんだか悔しい、と思いながら、土方は総悟を引き寄せてその頬に手を触れた。 目の端に山積みの仕事を捉えながら、あえて見ぬ振りをして、長い休憩になりそうだと思いながら唇を寄せた。 end [*前へ][次へ#] [戻る] |