セブンス・リート
6
「危ない!」
鋭い声が飛んできた、と思った次の瞬間、手元から火花が散った。視界が白くなり、そのすぐ後に真っ黒になる――
ふと我に返った時には、ジョイスは仰向けになって床に横たわっていた。視界いっぱいに不思議な模様が見える。四角や三角、円などの図形が複雑に組み合わさった模様だ。ああ、天井の模様だな、とジョイスはぼんやり思った。ずいぶんとお洒落じゃないか。
と、頭の上からバタバタと足音が近づいてきた。
「大丈夫か!?」
今度は、視界いっぱいにアークが映る。体を支えられ、ゆっくりと抱き起こされた。
「あれ……?」
一瞬、自分がどこにいるのか分からなかった。首をめぐらすと、部屋を取り囲む本棚、入口の扉、次いでアークの真っ青な顔が目に入った。
「お前、『録音機』に触ろうとして、突然倒れたんだ」
戸惑うジョイスの思いを汲んだのか、アークが言った。しかし、そう言うアーク自身も、いまひとつ事態を呑み込めていないようだった。首を傾げながら、
「いや、あれは倒れるっていうより、吹き飛ばされたっていうか……」
最後まで言い終わる前に、もう一つ足音が近づいてきた。シルバだ。
「ジョイス、大丈夫かい!? どこか、怪我は?」
「へーきへーき! これくらい……」
二人を心配させまいと、ジョイスは立ち上がろうとした。しかし、すぐにふらふらと座り込んでしまう。倒れた時の衝撃のせいなのか、手が麻痺したような感覚なのだ。思うように力が入らない。
「立てないのか?」
アークが目ざとくその様子に気が付いた。
「ん、なんか手がピリピリする」
「……ほら、手挙げて」
「手?」
促されるままに手を挙げる。すると、アークは脇から手を差し込むようにしてジョイスを抱きかかえた。ピリピリすると訴えた手には触らないように、ゆっくりと立たせる。
「お、悪いな!」
「他に痛むところはないか?」
ジョイスはその場でゆっくりと体を動かしてみた。倒れ込んだときに打ったのか、背中が少し痛むくらいだ。この程度ならすぐに治るだろう。手の痺れも徐々に収まってきている。
「……ん、大丈夫!」
ジョイスが歯を見せてにかっと笑ってみせると、アークが一つ、溜息をついた。そのまま、小さく手招きをする。
「? なんだよ?」
ジョイスが不思議そうな顔で近づくと、アークはその手をとり、力いっぱいねじった。
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