[携帯モード] [URL送信]

セブンス・リート

「縛られるって、どういうことなんだ? 自由ってなんなんだ?」

  一度口を開くと、渦巻いていた思いがせきを切ったように溢れだした。分からないことだらけだった。できることなら、今すぐ誰かに答えを聞いて、楽になってしまいたい。

「ずっと考えてたんだ。でも、分かんないんだ。なあ、教えてくれよ! このままじゃ、なんか、ここが痛いっていうか、苦しいっていうか……」

  ジョイスの右手は自身の胸元に当てられていた。次第に声がしりすぼみになり、最後には胸元の服を握りしめたまま黙りこんでしまう。しばらくの間、『仕掛け屋』の一室には壁に掛けられた時計の音だけが響いた。

「不安、だろうね」

  沈黙を破ったのは、穏やかな男性の声。

「何も知らない状態でそんなことを言われても、分からないのは当然だよ」

  穏やかな、けれどどこか淡々とした物言いに、ジョイスはおずおずと声の主を見た。

「……シルバ?」

  シルバはカップを両手で包み、ぼんやりと紅茶を眺めていた。
  『録音機』の修復作業で疲れているのだろうか。そう考えたところで、向かいに座るリーリエ、次いでアークと目が合った。どうやら他の二人も同じことを考えていたらしい。

「……お茶、淹れ直すわね。冷めちゃったでしょ」

  そう言って、リーリエがシルバのカップに手を伸ばした。しかし、シルバの視界にはリーリエが映っていないようだ。ふと、何かを思いついたかのように、

「僕が答えを知っているかもしれないと言ったら、どうする?」
「え?」
「君はその答えを知りたい?」
「シルバ、分かるのか?」

  シルバはゆっくりとジョイスと目線を合わせると、にこりとほほ笑んだ。

「……『僕』の出した答えでいいと言うなら、答えるよ」
「い、いいよもちろん! シルバの答えならきっと間違いない!」

  ジョイスは興奮した面持ちで椅子から身を乗り出した。すぐにでも答えを教えてほしいと言わんばかりの勢いだ。しかし、

「待った」

  アークが制止をかけた。

「なんだよ、アーク。邪魔するなよ!」

  苛立ったジョイスがアークに食ってかかろうとすると、驚くほど真剣な瞳とぶつかった。

「……シルバの答えが、お前の答えなのか?」
「何言ってるんだよ。そうに決まってるだろ」
「それでお前は納得できるのか?」
「……どういう意味だよ」

  そのままの意味さ、とアークは言った。ジョイスの真意を探るように顔をのぞき込み、

「他人が出した答えでお前は納得できるのかって、聞いているんだ」

  その言葉を聞いた瞬間、あれほどうるさかった雑音が遠のいていくのを感じた。


[*前へ][次へ#]

3/8ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!