セブンス・リート
3
「縛られるって、どういうことなんだ? 自由ってなんなんだ?」
一度口を開くと、渦巻いていた思いがせきを切ったように溢れだした。分からないことだらけだった。できることなら、今すぐ誰かに答えを聞いて、楽になってしまいたい。
「ずっと考えてたんだ。でも、分かんないんだ。なあ、教えてくれよ! このままじゃ、なんか、ここが痛いっていうか、苦しいっていうか……」
ジョイスの右手は自身の胸元に当てられていた。次第に声がしりすぼみになり、最後には胸元の服を握りしめたまま黙りこんでしまう。しばらくの間、『仕掛け屋』の一室には壁に掛けられた時計の音だけが響いた。
「不安、だろうね」
沈黙を破ったのは、穏やかな男性の声。
「何も知らない状態でそんなことを言われても、分からないのは当然だよ」
穏やかな、けれどどこか淡々とした物言いに、ジョイスはおずおずと声の主を見た。
「……シルバ?」
シルバはカップを両手で包み、ぼんやりと紅茶を眺めていた。
『録音機』の修復作業で疲れているのだろうか。そう考えたところで、向かいに座るリーリエ、次いでアークと目が合った。どうやら他の二人も同じことを考えていたらしい。
「……お茶、淹れ直すわね。冷めちゃったでしょ」
そう言って、リーリエがシルバのカップに手を伸ばした。しかし、シルバの視界にはリーリエが映っていないようだ。ふと、何かを思いついたかのように、
「僕が答えを知っているかもしれないと言ったら、どうする?」
「え?」
「君はその答えを知りたい?」
「シルバ、分かるのか?」
シルバはゆっくりとジョイスと目線を合わせると、にこりとほほ笑んだ。
「……『僕』の出した答えでいいと言うなら、答えるよ」
「い、いいよもちろん! シルバの答えならきっと間違いない!」
ジョイスは興奮した面持ちで椅子から身を乗り出した。すぐにでも答えを教えてほしいと言わんばかりの勢いだ。しかし、
「待った」
アークが制止をかけた。
「なんだよ、アーク。邪魔するなよ!」
苛立ったジョイスがアークに食ってかかろうとすると、驚くほど真剣な瞳とぶつかった。
「……シルバの答えが、お前の答えなのか?」
「何言ってるんだよ。そうに決まってるだろ」
「それでお前は納得できるのか?」
「……どういう意味だよ」
そのままの意味さ、とアークは言った。ジョイスの真意を探るように顔をのぞき込み、
「他人が出した答えでお前は納得できるのかって、聞いているんだ」
その言葉を聞いた瞬間、あれほどうるさかった雑音が遠のいていくのを感じた。
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