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セブンス・リート

「……まだ直らないわよ」
  リーリエは開口一番、呆れ顔とともに告げた。それはたった一言だったが、『仕掛け屋』の入り口でジョイスが崩れ落ちるには十分に威力を持った一言だった。

  日課の練習を終えたジョイスは『お茶目な音の仕掛け屋(トンボイトン・ギズモ)』にやって来ていた。目的はもちろん、修理中の『録音機(ミュージコード)』の様子を確かめるためだ。
  結果が分かれば連絡を入れる。そう言ったシルバを信じて待った方がよかったのかもしれない。しかし、元来ジョイスは我慢というものが苦手だった。結局、朝食も早々にアークを引き連れ『仕掛け屋』まで押しかけてしまったのだ。

「一応俺は止めたんだけどな……」

  ぜんまいの切れた人形のように動かないジョイスを椅子まで引きずり、無理やり座らせながら、アークが溜息混じりに言った。

「シルバ、昨日からずーっと『音(フォノ)』を当ててるのよ。今朝になってやっと、外装を作るのに適切な音調波の強さが掴めてきたの」

  リーリエが眉根を寄せて振り向いた先には、ティーポットと人数分のカップを運んでくるシルバの姿があった。普段と変わらない穏やかな表情を浮かべているが、よく見ると目元に隈ができている。

「ジョイス、大丈夫かい?」

  ティーポット、ティーカップ、茶葉の入った缶、と順に机に並べて、シルバは心配そうに尋ねた。

「本当は、一日でも早く君に『録音機』を返せればいいんだけど……」
「……いいんだ。シルバは三日って言ってたし。押しかけたのはオレだし……その、ごめん」
「……歌い手に何か言われたのかな?」

  うなだれたままのジョイスが体を硬くする。その仕草だけで、何かがあったことは明らかだった。

「えっと、それは……」
「言われたんだね」

  尋ねるというよりも確認するようなシルバの口調にジョイスは迷うような素振りを見せたが、やがて小さく頷いた。


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