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セブンス・リート

  聖歌学院の生徒と下町の子供の対決という見世物が幕を下ろした。芝居小屋からは、未だ興奮の冷めない観衆が一人、また一人と出ていく。賭けをしていた男が決着のつかない勝負に文句を言うのを聞きながら、ジョイスはぼんやりと舞台の端に腰かけていた。

「……はあ」

  溜息とともにアークが隣に腰を下ろした。ジョイスと同じように、舞台から客席を見つめている。薄い青色の瞳には芝居小屋の入り口から漏れる昼過ぎの光が映りこんでいるが、別のことに気を取られているのが明らかだった。

「……すげーよなあ……」

  しばらくして、息と一緒に何かを吐きだすようにジョイスが呟いた。それに応えて、アークは緩慢な動作で頷いた。

「……ああ」
「見たか、あれ……?」
「……ああ」
「『第一』と『第四』だろ……?」
「……ああ」
「まさか、こんなとこに来るなんてさ……」
「……ああ」
「……すげーよなあ……」
「……ああ」

  半ば放心状態で、気の抜けた会話を繰り返す。
  人気のない客席を見ていると、先ほどまでのできごとが嘘のように思えてくる。

「夢じゃ、ないんだよな……」

  不正な勝負とは言え、学院の生徒と手合わせをした。騒ぎの鎮静に、なぜか『第一』と『第四』の歌い手が現れて……。
  本当に芝居みたいだ、とジョイスは思う。それこそ女神ムーシケが仕組んだのかと疑いたくなるほどだった。

  アルベールは権力乱用の名目で護衛の者ともども取り押さえられ、学院ゆきの馬車に乗っている。サリアとクレフは二人の歌い手への対応に追われているようだ。予想外の観客の出現に慌てるのも無理はなかった。

「ジョイス、どこに行くんだ?」

  ふらりと立ちあがったジョイスを見て、アークが我に返った。

「ちょっと行ってくる」

  そう言うなり、外に向かって走り出した。妙に実感がなく、幻の中にいるような感覚だった。外に出れば、これは本当に起こったことなのだと誰かが教えてくれるような気がした。



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あきゅろす。
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