セブンス・リート
10
「あーいい香り。シルバ、私にも頂戴」
女が戻ってくるころには、淹れたての茶が4つ仲良く並んでいた。
「どうぞ。君たちも飲んで。よかったらスコーンもどうぞ」
渡されたカップに口をつける。香りがふわりとジョイスを包み込んだ。
「おいしい…」
「そう言ってくれると光栄だな」
カップをゆっくりと口に運びながら男は微笑んだ。
その笑顔を目にした途端、胸の奥が苦しくなったような気がした。
込み上げる何かを誤魔化すように茶を流し込もうとして、結果むせこんでしまった。
「おいおい…もうちょっと味わって飲めよ」
アークの呆れ声はジョイスが睨み付けると止まった。
その様子を見ていた男はくつくつと笑っている。
「な、なんだよ…」
「あぁ、すまないね。君たちは本当に仲がいいんだね。アークの言っていた通りだ」
「仲がいいというか、腐れ縁だけどな」
アークがため息混じりに補足する。
「あら、でもホントに兄弟みたいよ」
女がスコーンを取り分けながらアークに目配せをする。
「仲良しすぎて嫉妬しちゃう」
「こら、リィ。アークに色目を使っちゃだめだ」
はいはい、と言いながら女はスコーンを4人の前に置いた。
「シルバのスコーンは美味しいわよ〜。なんてったって私の旦那様ですもの!」
「旦那…ってことは、夫婦!?」
「そーよ。私がリーリエ・トンボイトン。んで、こっちが」
「シルバ・トンボイトンだ。よろしく」
気の強そうなリーリエがにっこりと笑い、柔らかな物腰のシルバがふわりと微笑む。
正反対の印象を受ける2人が夫婦だとは、にわかには信じられなかった。
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