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セブンス・リート


すぐに食器の触れ合うカチャカチャという音が聞こえる。
お茶の用意をしているようだった。
ジョイスは背後にちらりと目をやった。教科書は回りの雑貨と同化し、くすんで見えなくなっている。

また届かなかった。
今度こそ届くと思ったのに。

名残惜しそうに本のある辺りに目をやっていると、にわかに戸口が騒がしくなった。馴染みのある声と初めて聞く声が近づいてくる。

「たっだいま〜っ! ったく、畑仕事も楽じゃないねぇ」

扉を乱暴に蹴飛ばして入ってきたのは女だった。頭巾を被り、つなぎに長靴を合わせ軍手をはめている。背中には大きな籠を背負っていた。

女のすぐあとにアークが続く。その手にはもう1つ籠が抱えられていた。
ジョイスと目が会うとアークは苦笑した。

「悪いな、呼びに行くつもりが手伝わされちまった」

銘々が籠を床に置く。中には薪だろうか、短く切られた木が入っていた。

「薪、多すぎないか? もう春だろ?」

目を丸くして尋ねたジョイスを一瞥して、女は微笑んだ。

「違うわ、ボク。これは薪じゃいのよ…っと」

女が頭巾を取った。髪がばさりと肩にかかる。
正面から顔を見て初めて、ジョイスはこの女が随分と若いこと、そしてなにより美人だということに気がついた。
サラリとした金髪は頭頂でまとめてはいるが、それでも腰まで届いている。鼻筋の通った顔立ちにつややかな唇の紅(あか)が映えていた。

今は土にまみれて黒ずんでいる肌も、本来は抜けるように白いのだろう。



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あきゅろす。
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