セブンス・リート
8
すぐに食器の触れ合うカチャカチャという音が聞こえる。
お茶の用意をしているようだった。
ジョイスは背後にちらりと目をやった。教科書は回りの雑貨と同化し、くすんで見えなくなっている。
また届かなかった。
今度こそ届くと思ったのに。
名残惜しそうに本のある辺りに目をやっていると、にわかに戸口が騒がしくなった。馴染みのある声と初めて聞く声が近づいてくる。
「たっだいま〜っ! ったく、畑仕事も楽じゃないねぇ」
扉を乱暴に蹴飛ばして入ってきたのは女だった。頭巾を被り、つなぎに長靴を合わせ軍手をはめている。背中には大きな籠を背負っていた。
女のすぐあとにアークが続く。その手にはもう1つ籠が抱えられていた。
ジョイスと目が会うとアークは苦笑した。
「悪いな、呼びに行くつもりが手伝わされちまった」
銘々が籠を床に置く。中には薪だろうか、短く切られた木が入っていた。
「薪、多すぎないか? もう春だろ?」
目を丸くして尋ねたジョイスを一瞥して、女は微笑んだ。
「違うわ、ボク。これは薪じゃいのよ…っと」
女が頭巾を取った。髪がばさりと肩にかかる。
正面から顔を見て初めて、ジョイスはこの女が随分と若いこと、そしてなにより美人だということに気がついた。
サラリとした金髪は頭頂でまとめてはいるが、それでも腰まで届いている。鼻筋の通った顔立ちにつややかな唇の紅(あか)が映えていた。
今は土にまみれて黒ずんでいる肌も、本来は抜けるように白いのだろう。
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