セブンス・リート
7
柔らかな声が背中から降ってきて、ジョイスは慌てて振り向いた。
今まで誰もいなかった店内に男が立っていた。
麻のシャツに若草色のエプロンをかけ、長めの髪をリボンでまとめて背中に流している。丸眼鏡の奥の瞳は優しく細められていた。
「アークの友達かな? 彼ならすぐ来るから待っていて」
まごつくジョイスを見て男は微笑み、手に持っている籠を足元に置いた。軍手を外し、首にかけたタオルで汗を拭う様子は、まるで畑作業から戻ってきた農夫のようだった。
「あ、あの…」
「気をつけて。彼女に知られたら怒られてしまうからね。…お茶は要る?」
どうやら挙動は全て見られていたらしい。
ジョイスが返事をする間もなく、男は店の奥に引っ込んだ。
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