セブンス・リート
4
部屋の床に着地したときにギュムッという異様な音がした気もするが、そんな音を打ち消すほどに朝の空気は清々しかった。
「――って待て! お前が身軽なのは俺だってよく知ってるが、人を踏み台にするのはどうかと思うぞ!」
「あれ、何やってんだアーク」
きょとんと自分を見下ろす顔に、腹の底からふつふつと湧いてくる怒りをこらえながら、アークはじたばたともがいた。
「お前が……俺を……踏んでるだろうが!!」
「あっ、そうか。ワリ」
悪びれもせずそう言って、アークの腹の上に乗っかっていた足が正規の床へ着地する。トン、という軽い音がした。
「ジョイス、また歌ってただろ」
立ち上がって服の埃をはらいながら、アークは目の前で大きく伸びをし、口を全開にして欠伸をするジョイスを見た。
「なんで? 別にいいだろ?」
目じりにわずかに涙を残したまま、ジョイスは胸元にかけた木彫りのペンダントのようなものを振ってみせた。
「オレの音(フォノ)を録ってたんだ。最近イカレてきてるけど、まだ勉強には使えるかなと思って」
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