セブンス・リート
10
「2人で読み合わせでもしよう」
「いいのか? そういうの苦手だろ?」
ジョイスは往来の人だかりの中アークを見上げた。
その途端アークの右頬がひきつったように見えたが、すぐに笑顔が浮かぶ。
「…修理屋の近くは静かだろ。人もそんなにいないだろうし」
ジョイスは前を見た。
露店が固まって立っており、商品を見定めようと集まる客でごったがえしていた。
「…あれでも?」
「…い、いいんだよ! さっさと始めるぞ!」
台本を広げるアークの手が震えているのがよく分かる。
その様子がおかしくて、思わず笑い声を漏らしてしまった。
「…なんだ」
「いや、なんでも」
怒られないよう笑いを噛み殺しながら、ジョイスも台本を広げた。
「最初のシーンは…王と従者の会話か」
「じゃ、オレ従者な!」
アークが台本に目を通してニヤリとする。指がある一点を指していた。
「どうぞ。思う存分やってください、歌姫様」
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