セブンス・リート
3
ジョイスはパチンコを取り返そうとしたが、その手はむなしく空を切った。アークが腕を高くあげているため、手が届かないのだ。
「…このやろっ、オレがチビだからってナメやがってー!!」
「別にナメてない」
「ナメてる!」
「ナメてない」
「ナメてる!」
「ナメてない」
「ナメてるったらナメてる!」
背中に視線を感じてちらりと後ろに目をやると、親子とおぼしき3人組が興味深そうにこちらを見ていた。父親と母親の間にぶらさがっている小さな女の子が、純粋な瞳を真ん丸に見開いている。
痛い。
猛烈に痛い。
「アーク、頼むよもう一回だけ! あと1つ取れば全種類制覇なんだ」
ジョイスはアークが何を考えていようとおかまいなしらしい。パチンコの置かれた台の上に硬貨を出すと、目標に向かってねらいをつけはじめた。
「おい、行くって言ってるだ――」
突然響いたパン、と言う乾いた音にアークは言葉を呑み込んでしまった。
見れば、ジョイスは店主から何かを受け取っている。手の平にそれをコロコロと転がして、満足げな表情でアークに振り向いた。
「よし、全種類制覇! さ、行くか!」
「は? ちょ、おいっ」
言うなり、ジョイスはアークの腕をつかんでぐいぐい引っ張っていく。
引っ張られながら後ろを振り向いた。肩をおとして微動だにしない店主からも、親子連れからも離れていく。
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