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セブンス・リート
10

何が起こったのか理解したのは、ジョイスの足が1階フロアの床に着いたときだった。
隣で肩を上下させて喘ぐアークと、いつも食事をするテーブルの反対側に見慣れた姿を見つけたジョイスは、理由はともかく、アークが自分を引っ張って2階から連れてきたのだということで納得した。

1階ではスカートにエプロン姿の恰幅の良い女性が忙しく立ち働いていた。
厨房では大きな鍋に野菜たっぷりのスープがぐつぐつと煮えており、オーブンからは香辛料をきかせたローストチキンの焼ける香ばしい匂いが漂ってくる。

食欲をそそる匂いにごくりと唾を飲み込んだジョイスとは裏腹に、アークは焦った様子で、てきぱきと動き回る女性の背中に声をかけた。

「お、おふくろ、遅くなって悪い! ジョイス連れてきたから――」

言葉は最後まで続かなかった。アークとジョイスの母親――サリアが、くるりとこちらに振り向いたのである。

普段は柔和な表情で笑みを絶やさないサリアだが、今日ばかりは厳しい表情をしている。
茶色い髪に包まれたふっくらした頬は、熱気のこもる厨房での作業のために上気しており、その上にちょこんと乗った青い瞳は、きゅっと斜め上に吊りあがっていた。

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あきゅろす。
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