突如現れた爽やか少年(山本+ジル)[1]
ザァーザァーと降り続ける雨が冷たい。
頼れる奴なんかいない。
頼りたくもない。
オルゲルトとも1週間前にはぐれたっきり会っていない。
と言うか何故日本に来たんだろう?
確か、いきなり未来の記憶が頭の中に入って来て、それで…
ああそうだ。
白蘭様だ。
未来の記憶を見て、白蘭様を探そうと思ったんだ。
で、オルゲルトと相談して『入江に会えれば行方が分かるかもしれない』ってなって、日本に来たんだった。
でも入江が日本の何処に住んでんのかわからなくて、オルゲルトと歩き回ってたら変な奴等に襲われて…
ヴァリアーがどうとか言ってたから、きっと俺をベルの奴と間違えたんだろう。
数が多くて、何とか全員倒せたけどオルゲルトとはぐれたんだった。
「…雨、止まねぇな…」
1週間何も口にしていない。
体に力が入らない。
まともに寝てない。
金は、全部カード使ってたけどカードを持ち歩いているのはオルゲルトだ。
俺は失敗作の弟ちゃんと違って、万引きやら食い逃げなんてしない。
そんなの、金の無い庶民のすることだ。
正当王子のやることじゃないし、俺のプライドが許さない。
フラフラと歩いていたけれど、立ってるのも辛くなって近くの公園のベンチに倒れ込んだ。
(…カッコ悪ぃ)
そう思いながらも、体はもう動いてくれない。
まるで、未来の記憶での俺の最期だ。
体が動かなくなって、気が付いたら死んでる。
俺は一体、何回死んだことになってるのだろう。
弟ちゃんに殺されて一回、未来で殺されて二回…
で、今回で…三回。
しし…あー、笑えねー。
俺はゆっくりと目を閉じた。
次に目を覚ました時、俺はどうなっているのだろう。
死んでいるのだろうか。
もし、死んでいたらお父様やお母様に会えるのかな。
「…こんなこと考えてる時点で、死期が近いってことだよな」
俺は自分で自分を笑った。
こんな死に方、今までで一番惨めだ。
金が無くて住むとこも食うものもなくて、餓死。
どっかの貧しい国の子供と一緒じゃねぇか。
ゆっくり、ゆっくりと意識が沈んでいく。
最期に俺の頭に浮かんだのは、まさかの弟ちゃん―…ベルの顔だった。
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