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さぁ、お泊まり会の始まりだ。




「あっつー…」



手でパタパタと自分を扇ぎながら、金髪の青年―…ベルフェゴールが言った。

ベルが言う通り、今日は凄く暑い。

気温は35度を超え、もう人がいられる温度じゃないと思った。



「去年はこんなに暑く無かったのになー…」



そんなことを呟きながら、ベルはハァ、とため息を吐いた。


コンコン。

部屋がノックされる。

ベルが「誰?」と返すとやる気のなさそうな声が返ってきた。



「ミーですー。フランですー」

「は?カエル?何、王子に何か用?」



ベルが聞くと、フランはガチャ、とドアを開けた。



「俺開けていいなんて言ってないんだけど」

「まぁいいじゃないですかー」



そう言いながらフランはズカズカとベルの部屋に入って行った。


フランは部屋に入ると、バタンとドアを閉めた。



「んで、何の用だよ?」

「いえー、今日は暑いのでセンパイにもお裾分けしようかと思いましてー」

「お裾分け?」

「はいー、どーぞー」



そう言ってフランは手に持っていたコンビニの袋をベルに手渡した。


中には、ソーダ味の棒アイスが入っていた。



「…アイス?」

「早く食べないと溶けちゃいますよー」



フランはそう言うと、コンビニの袋から棒アイスを一本取り出し、袋を開けてアイスを口に運んだ。

そしてもう一本取り出して、ベルに差し出す。



「サンキュ」



ベルはそう言って受け取ると、袋を開けてアイスを口に運んだ。



「ん、冷た…」

「やっぱり夏はアイスですよねー」



アイスの冷たさが心地良い。

この地獄のような暑さも幾分かは和らいだ気がする。


それから2人でアイスを食べた。



「…と言うか、センパーイ」

「あんだよ」

「何でこの部屋こんなに暑いんですかー?」



フランが言う通り、ベルの部屋はかなり暑かった。

フランの部屋よりも、あのレヴィの部屋よりも。



「……昨日の夜クーラー壊れたんだよ」

「あらー」

「『あらー』じゃねーよ!おかげで俺暑くて昨日眠れなかったんだぞ!」

「他の人の部屋に行けば良かったじゃないですかー」



フランが言うと、ベルは本日二度目の溜め息を吐いた。



「他の人の部屋つったって、ボスの部屋は無理だしルッスのとこ行ったら何されるかわかんねーし、レヴィの部屋なんて近付きたくもねーし…」

「スクアーロ隊長はどうですかー?センパイ小さい頃よくお世話になってたんでしょー?」

「…スクアーロんとこ行ったら仕事残ってるから無理って言われた」

「あ、一応行ったんですねー」

「だってスクアーロ以外いないじゃん。マーモンもいない、し…」



ベルの表情が少し暗くなる。


(前任のこと、思い出してるんですねー…)


何故だか胸がチクリと痛んだ。

フランはその痛みに耐えるように、胸にそっと手を当てた。

その行動に疑問を覚えたのか、ベルはフランの顔を覗き込んだ。



「どしたんだ?」

「い、えー…何でもないですー」



ベルはフランの顔色が良くないことに気付く。

フランは何時も通り無表情だが、ベルの目には具合が悪そうに見えた。



「フラン、」

「…何ですかー?」

「クーラーの修理、明日にならないと来ないんだって。ここ人里から離れてるから」

「人里って…まぁ、ここ山の中ですけどー」

「だからさ」

「はいー?」

「今日お前の部屋で寝るから」

「…………え?」



フランはベルの言った意味が理解出来ず、きょとんとしてしまった。



「だーかーら、俺今日お前の部屋で寝るから夜部屋にいろよって」

「センパイ、どーして…?」

「あ?どーしてって何だよ」

「だってさっきスクアーロ隊長以外いないって…」

「ししっ、まさかお前俺がお前の部屋に行くの嫌なの?」

「!いえ、そんなわけ無いじゃないですかー!!……あ」



フランはヤバい、と言うような顔をして、ベルから視線を逸らした。

チラリとベルを見ると、綺麗に並んだ白い歯が見えた。



「ししっ、じゃあ決定ー。つーわけで今から行くから」

「い、今ですかー?」

「だってここ暑いし」

「……部屋を片付ける時間を下さーい」



フランがおずおずと言うと、ベルはまたニヤリと笑った。



「ムリ」

「なっ、何でですかー!?」

「お前もいきなり俺の部屋に来たから」

「う…」



フランはしまった、という顔をした。

それに対しベルはとても楽しそうだ。



「んじゃあレッツゴー!」

「ちょ、待って下さいよー!センパーイ!」



2人は部屋を後にし、フランの部屋へ向かった。






さぁ、お泊まり会の始まりだ。
 



(枕投げでもする?)

(…ここに枕1つしか無いんですけどー)

(は?それくらい幻覚で出せよ!)

(そんなことに力使わせないで下さーい)




 


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