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短編
あまっ!?
「ユーリ、今日は暇かい?」
ごそごそと帰る支度をしている途中、ユーリはフレンにそう話し掛けられた。
「いや、暇じゃないね」
そうぶっきらぼうに言うと、フレンはあからさまに顔を歪める。
「…君の生活に口出しするつもりはないけど、いつになったら…!」
そこでユーリはがたりと立ち上がる。
「じゃ、また明日な」
「ユーリ!」
「俺の生活には口出さないんだろー?」
嫌味っぽくそう言うと、フレンはぐっと押し黙った。
その様子を見てから、ユーリはひらひらと手を振りながら教室を後にした。


(あいつは、俺になんかやらせたいんだろうけど…)
ユーリは今、何にも所属していない。
俗に言う帰宅部なのだが、割方器用になんでもこなせる為よく助っ人として大会に行くことはあった。
(助っ人はやってんだから、それでいいじゃねーか)
うん、と一人で納得しながら帰路を急ぐ。
(部活とか…それよりも)
ぴたりとユーリはある店の前で止まった。
そして扉を開けて中に入った。
カランカラン…とベルが鳴る。
「いらっしゃっいませ!」
すると、奥から元気な声と共に少女が現れる。
「あ、また来てくれたんだ!」
弾けそうな笑顔で迎える彼女に、自然と表情が緩む。
「ルークに会いたくてな」
そうユーリが言うと、少女…ルークは顔を赤く染めた。
「…じゃあ、いつもの所でいい?」
「ああ」
そう言うと、ユーリは窓側の席に通された。
「ご注文は?」
「プリンパフェと紅茶のセットで」
「はい、わかりました」
にこりと笑うと、ルークはそのまま厨房に駆けて行った。
しばらく待っていると、お盆に注文品を乗せたルークがよたよたと出てきた。
「ご注文のプリンパフェと紅茶です」
パフェと紅茶がテーブルに並ぶ。
スプーンを手に取り、プリンを一口すくって口に運ぶ。
(うん、甘い。うまい)
そう思いながら食べていると、ルークはユーリの目の前に座った。
「仕事中だろ?」
「店長が、今他にお客さんいないからいいってさ」
「そっか」
それだけ言うと、ユーリは目線をパフェに落とした。
すると突然、ルークはユーリの手からスプーンを取った。
「あ…」
そして一口分だけすくうと、にっこりと笑いながらユーリに向けた。
「あーん」
「は!?」
ユーリは思いっきり目を見開いた。
「だから、はい。あーん」
「いやいやいや…お前、いい歳してそれは…」
「なに、俺がおばさんだっていうのか?」
「そういうわけじゃ…」
「いいよねー、ユーリはぴっちぴちの高校生でさ」
ぷうっと膨れるルークにユーリは心の中で萌えながらも、はあ…とため息をついた。
「分かったよ…一回だけな」
そう言うと、ルークはにぱっと笑顔を見せた。
そして、目の前に差し出されたスプーンをはむっとくわえた。
「ん、うまい」
笑顔を浮かべながら言うと、ルークもまた笑顔を見せた。
「あともういっかい」
「え」
「いいだろ?」
はっきり言ってその笑顔には弱い。
仕方なく頷くと、ルークはまた一口すくって差し出してきた。
それを食べようと顔を近付けた瞬間、スプーンが後ろに引かれてそのかわり柔らかいものが唇に当たった。
「!!」
はっと思った時には既にルークはユーリから離れていた。
「…し、仕事に戻るな!」
ルークは顔を真っ赤にし、そのまま厨房に走り去って行った。
「…あま」
ユーリはくすりと笑った。
(甘いのは好きだけど…。甘い時間はもっといいもんだな)
そう思いながら、ユーリはまたパフェを口に運んだ。























あきゅろす。
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