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short*story
C


そのアレンの反応に、神田もつられて赤くなる。

「…あの時、お前の服とか探す余裕がなくてな、とっさにだったんだ…
す、スマン…」


神田は照れながらも、罰が悪そうに謝った。
心なしか少しだけ声がうわずっている。




その事実に、今更ながら自分がどれほどの醜態をさらしてしまったのか自覚するアレン。

物凄く恥ずかしい。



「…ですか?」

「は?」


「神田…僕の体見たんですか?」

「あ?…そりゃ事情が事情だし、仕方ねぇだろうが?」



わかってはいたが、こうして神田本人の口から直接聞かされるとショックを隠しきれない。

アレンはたまらず神田を責めてしまうのだった。


「…っど、どこまで見たんですか?」





「はぁ!?どこまでって…」

急にそんな事を言われてたじろぐ神田。

しかしそこで神田はアレンを浴槽から抱き上げた時の事を思い出してしまい、思わず顔を発火させてしまった。

それをアレンは見逃さなかった。


「あ、今なんか思い出してたでしょう!」
「な…っ」



「…見なかったことにするって言っておいて…か、神田の変態!」


アレンの言葉はエスカレートし、ついに言わなくても良いことまで口走ってしまった。



ぶちっ

当然そこまで言われれば、神田はキレてしまう。



「…いい加減にしろよ」
「へ?」


神田はドスのきいた声でボソッと呟いたかと思うと、乱暴にアレンをベットに押し倒した。


「!!?」




アレンは突然の事にただただ困惑するばかり…

だが、本能的に嫌な予感がして、懸命に逃げようと神田の下で暴れ出した。
しかし、両腕を掴かまれたアレンにはそれを振り解く力なんてなくて…



ただただ組み敷いている相手の顔を涙を溜めた目で睨みつける。

だがそれも神田にとっては全くの逆効果だった。





一方押し倒した本人はと言うと…

キレた勢いで、思わず押し倒してしまったが、こうも簡単に押さえ込めるとは思わなかった。

今まで男だと思っていただけに尚更だ。

そのギャップに、神田の中で何か知らない感情が沸き上がってくる。



あんなに鬱陶しくて、気に入らなかった"モヤシ"が今、自分の腕の中にいて、為すすべもない姿になっているだなんて…。


この感情は…優越感か
それとも征服感か…


しかしそんな事は
どちらでもよかった。

兎に角気分がよかった。


神田は自分の気持ちが高ぶってくるのを感じた



神田は再度組み敷いてる相手の顔を覗き込んだ。

案の定、困惑している。
組み敷いた体が、押さえ込んだ腕が震えているのがわかった。


しかし、けしてアレンはただ神田のいいようになってはいなかった。


真っ直ぐに此方を、神田を射抜くような目で睨んでいた。

その瞳は、うっすらと涙にぬれていたが…



はじめは冗談半分でいじめてやろうと思っただけなのに、神田は不覚にもそれに見惚れてしまう。


明らかに自分の方が不利なくせに、それでも心だけはけして屈しないとでも言うのだろうか…


けして揺るがない女

可愛くない女


けれどだからこそ、
手に入れたいと思ってしまったのだろうか…



「どいて下さい、神田」

アレンは震える声で、しかしはっきりと神田に訴える。

「はっ」


まったくコイツはどこまでも…



「どいて下さいって言ってるでしょ!?」


自分の言葉を聞き入れてくれない神田にしびれを切らしたアレンは、ふさがれてない唯一自由な足で、神田のみぞおちを思いっきり蹴った。


「…ぐっ」


不意をつかれた神田は
その痛みに一瞬押さえていたアレンの腕への力を弱めた。


その隙に、アレンは神田の下からすり抜けた。


そして、一気に出口のドアまで走る。


しかし、


ダンッ


アレンの双方から伸びてきた大きな腕のせいで、逃げることは叶わなかった。


「…かっ「どーやらテメーは…」


「…や「一回痛い目見ねーとわかんねぇらしいな」

「あっ…」


神田はアレンをドアに貼り付けて、両腕を拘束し、その膝の間に足を割り込ませた。

今度は絶対に逃げられないように。



「や…神田、やめ「うるせー」


神田は低い声でそう言うと、アレンの左肩に顔を埋めた。

アレンはそれにすぐには反応できずに硬直したままでいると、不意に頸部にチクリと鋭い痛みが走った。


「いた…っ」


その突然の痛みにアレンが顔をしかめていると、ゆっくり顔を上げた神田と目が合った。


どくんっ


アレンはその目を見た瞬間、金縛りにあったかのようにまた動けなくなる。


真っ直ぐに此方を見る神田の目は、暗闇の中で
怪しく光っていて…
それでいて熱のこもった目だったから…


そんな目で見られたら、どうしていいかわからなくなる。


…どくんどくんっ


動かない体

逸らせない視線

長い長い沈黙


ただ、おのおのの心臓の音だけがうるさく体中を駆け巡る。



「…」

不意に神田が何か言おうと口を開いたときだった。



ジジジジ…


唐突に室内に響く無粋な電子音。


その正体は神田の所持しているゴーレムからだった。

暫くして、連絡を寄越した張本人の声が聞こえてくる。






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