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short*story
witch and vampire.(ティキアレ)


まあるいまあるい
オレンジ色の満月は


大好きなかぼちゃの色に似ている…











真夜中の細い路地裏、
真っ暗なその場所から
ちりりんと鈴の音がして、真っ黒と対照的な真っ白な猫が現れる


その猫はまだ子猫で、
しかし目の色はきらきら輝く銀灰色と真っ赤な飴色のオッドアイ



どうしてなかなか猫らしくないその子猫

何故ならその猫…いやその少女は…



「んー猫の姿って楽だけど退屈…」




月の光で映し出された影は、見る見るうちに猫のシルエットから人間のものへと変わる



しかし普通の人間は猫になったりはしない



そう彼女は"魔女"


古典的なそれに乗って空を飛ぶ




今宵は満月…
魔力が強くなる"この時だけは"こうして元の姿に戻れるのだ



「さて、仕事をしなくては…」




魔女は誰にも聞こえない独り言を呟き夜の闇へ消えていった







*****








丘の上に立つ大きな屋敷

はるか昔はそれはそれは栄え、にぎやかであったであろうその城は、時代と共に衰退し、今は荒れ果てた廃墟と化し、誰も近づこうとするものはいない




そのふもとに先程の魔女の少女は降り立った



誰も住んでいないはずのその城に、一体何の用があるというのか…




彼女は几帳面にも玄関から入り、なんの躊躇もなく、ぎしぎしと鳴る階段をのぼっていく



そして階段を登りきった廊下の突き当たりの部屋

大きな扉の前に来ると、深呼吸をし、
その扉を開けた












「おかえり」





「…ただいま、ティキ」







なんとそこには人がいた

暗くてよくわからないが、部屋に唯一残されていた家具、大きなソファーに腰掛け、此方をみている

その瞳の色だけは金色で、闇の中でもはっきりとわかった



そしてその人物は
彼女を見るや嬉しそうに笑った




「おいおい、いくらなんでも呼び捨てはないんじゃない?ご主人様に向かって」


そして甘く響くテノールで相手をからかう

どうやらまだ年若い男のようだ




「あなたを主人などと思ったことはありません」


その言葉が気に入らなかったのか、魔女の彼女はしかめ面をし、きっと相手を睨みつけ、威嚇する



「そう怒んなって。事実子猫の時は俺が飯、喰わせてやってんだぜ?」




「それはお互い様でしょう?この姿の時は、あなたのご飯、僕が調達してきてあげてるんだから」



そう言って彼女は服の間に忍ばせていたものを取り出し、相手の目の前に差し出す


途端に先程まで柔らかだった男の目つきが鋭くなった



窓から入ってくる月に照らされて光る、透明な筒に入った赤い液体




「上玉だな」



「相変わらず目ざといですね。今回は苦労しましたよ?あなた好みの純潔の女の血です」




そう、彼はヴァンパイア
人間の血を吸って生きる吸血鬼

しかし訳あって彼は直接狩りには出ることができない




彼は彼女からそれを奪うと、人目もはばからずそれを目の前で豪快に一気に飲み干す

魔女の少女が苦労してとってきたそれは一瞬でからっぽになってしまった



「…もっと味わったらどうなんですか?」


「これが性だからしょうがねぇだろ?血を見るとつい興奮して我を忘れちまう」



口から垂れた血を、黒い布で拭き取りながら言う彼を見て、少女はため息を付く


本当に普段の彼とは大違いだ



「食事もすんだようですから、僕はそろそろ戻ります」


そんな彼を見るのがなんとなく不快で、彼女は踵を返し、部屋を出て行こうとした



しかし、背後から腕を掴まれ抱きしめられ、かなわなかった




「…なんのつもりですか?食事は済んだでしょう?」



「…デザートがまだだ」




男はそう言って素早く彼女の服をずらすと、その肩に歯を立てた



「っ……!」



鋭い痛みに少女は顔をしかめる

しかしこうして抑えつけられては後の祭り



どくどくと血を吸われる感覚に、貧血のような目眩を覚える





「…まったく可笑しな人。清い人間の血よりも穢れた魔女の血を好むなんて…」



呆れてそう言えば、
彼はその肩口から顔を上げた




「別に魔女の血なんて好きじゃないよ。
アレンだから。

それにお前は汚れてない」



「…意味が違いますよ、バカティキ」




くさい台詞に呆れつつも、耳のあたりがくすぐったくなる彼の言葉



"何故?"

かなんて知りたくもないけれど、


どこの馬の骨かもわからない若い女の血よりも、
食事にもならない自分の血の方が好きだと言われることには、
優越感を感じて悪い気はしない


そうして少女が一人くすくすと笑っていると、男は再びその肩口に顔を埋め、傷口をなめた



「ひゃっ…!?」



突然の感覚に、少女は思わず裏がえった声を出してしまう



「何笑ってるの?」


「…別に?

それよりいい加減、離してくれません?」


少女は今考えていたことは悟られないように話をすり替える




「どうせあと少しで猫の姿に戻っちまうんだろ?
だったら、もう少し付き合えよ」


「なっ…あなたは…」




しかし男はそんな彼女の思惑を知ってか知らずか、彼女を離そうとはしなかった

少女はため息をつく



「大丈夫。
戻ったらたっぷりご褒美あげるから」





甘い猫なで声でそうささやかれれば、頭の芯がゆれる

それでなくともご褒美という誘惑に良心がぐらつくというのに





しばしの沈黙の後、
少女は男の方へ振り返り、妖艶な笑みを浮かべる






「僕が戻ったら、ミルクたっぷりのパンプキンスープを用意しておいて下さいね」




「了解」









こうして二人の満月の夜は更けていくのだった















end..










**後書き**


なんとか間に合いました。
これはティキアレでハロウィンな話を書こうと前から考えていたお話です。
て、またまたこんなオチですみません(土下座)


今回アレンは魔女ということで小悪魔な感じにしてみました。
ティキは吸血鬼です。
(クロちゃんごめんね)


えーと意味わかんない設定ですがお気に召して頂けたら幸いです。

ではでは**






*title**「魔女とヴァンパイア」

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あきゅろす。
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