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夢の硝子玉
14
「綺麗だって?
そんな心にもないこと言うもんじゃないぜ。」

「え…っ?!
ぼ、僕、なにか変なこと言った?」

「俺は…顔のことをどうこう言われるのは嫌いなんだ!
おまえだって、女の癖に『僕』なんて言い方は止したらどうなんだ?」

ラスターの異常な程の剣幕に、エリオットは口をつぐんだまま怯えたように俯いた。



「おいおい、ラスター、何をそんなに怒ってるんだ!?
エリオットは、おまえの瞳が綺麗だって言っただけだぜ。」

「そうよ、ラスター。
エリオットは…」

「……もう、良いっっ!」

ラスターはそう言い残し、店を飛び出した。



「……エリオット、気にすることはない。
ラスターは、きっと、機嫌が悪かっただけさ。」

「私とそっくりだと言ったのが、気に入らなかったのだろう。
ラスターは私のことを嫌っているからな。
しかし、本当に彼の瞳は私と同じような瞳の色なのか?
彼は前髪を伸ばしているから気付かなかったよ。」

「俺もだ…」

「私は気付いてたわよ。
やっぱり、女の子の方がこういうことは気付きやすいものなのよね。」

そう言いながら、セリナはエリオットの肩を優しく抱きしめる。



「ま、とにかく、奴は家族のことや顔のことは言われたくないようだ。
これからは気を付けようぜ。」

「……ラスターの瞳の色はね…お母さんにそっくりなんですって。」

セリナが遠くをみつめながらぽつりと呟いた。




「えっ?」

「私も詳しいことは知らないんだけど…ただ、そんなことを以前教えてくれたことがあるの。
さっきのエリオットと同じように私がラスターの瞳の色を綺麗だって言った時…ラスターは、とても哀しそうな顔をしてそう教えてくれたのよ。
お母さんとの間に、ラスターは何か辛い事があったんだと思う。
だから、きっとあんなに反応してしまうのよ。」

「そうだったの…
じゃあ、僕、悪い事しちゃったね…」

「あなたが気にすることはないわ。
ラスターもそんなことはわかってるのよ。
わかってても、どうしようもなくなるんだわ、きっと…
大丈夫よ!彼はすぐに元気になるから!」

セリナの穏やかな微笑みに、エリオットは小さな微笑を返した。



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あきゅろす。
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