夢の硝子玉 15 * 「オスカーさん、長い間お世話になりました。」 「オスカーさん、本当にどうもありがとうございました。」 まだ夜の明けきらない薄紫の空の下で、ダルシャ達は口々にオスカーへの言葉を述べる。 「そっちの用事がすんだら、またいつでも遊びに来てくれ。 待ってるからな。」 お互いが手を振り、オスカーの家から離れて行く最中、ラスターが振り向き一際大きな声をはりあげた。 「おやじーーー! 必ずまた戻って来るからな!」 そう叫ぶと、ラスターは町に向かって駆け出した。 残された者達は、一瞬戸惑いながらも、ラスターの言葉に顔を見合わせにっこりと微笑む。 オスカーは、目尻に溜まった涙をそっと指で拭った。 * 「あれ〜? 皆、どうしたんだ?こんな朝っぱらから。」 眠そうな顔をしたフレイザーが、扉を開く。 「……フレイザー…結局、連れの者はみつからなかったのだろう…?」 「……まぁな。」 「そうか……さぁ、行くぞ! すぐに服を着替えてくれ。」 「えっ!?」 ダルシャの有無を言わさぬその口調に、フレイザーはまだぼんやりしながらも指示に従った。 フレイザーが顔を洗い服を着替えると、扉の前にはラスターがフレイザーの荷物を持って立っていた。 「さぁ、行くぞ!」 「行くって…どこへ?」 「良いから早く!」 眠気はなくなっていたものの、わけもわからないままに歩かされ、フレイザーはついにダルシャに声をかけた。 「なぁ、ダルシャ、そんなに急いでどこへ行くんだよ。」 「次の町から馬車に乗る。」 「馬車ならゾラーシュからも出てるだろ? なんでわざわざ…」 「良いから、良いから! さ、頑張って歩くよ!」 誰からも詳しいことを聞けないまま、フレイザーは皆と一緒に歩き続けた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |