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夢の硝子玉
10
「……フレイザー、どうかしたのか?」

フレイザーの放心した様子に、ダルシャは思わずフレイザーの顔をのぞきこんだ。



「い、いや…なんでもない。
とにかく、この話は俺に任せてくれ。
もう一度、エリオットとゆっくり話してみたい。」

「あぁ、わかった。
彼女も私より君の方が話しやすいだろうからな。
何か困ったことがあれば、またいつでも相談してくれ。」

「ありがとう、すまなかったな。
……そろそろ戻ろうか、二人が心配してるかもしれない。」









「あ、フレイザー、どこ行ってたの?」

まだ少し腫れた瞼をしたエリオットが声をかけた。



「いや、ちょっとダルシャと庭にな…」

そう言いながらフレイザーはダルシャに向かって頷いた。



「フレイザー、ところで、ジャックはどうしたの?」

「そう!それなんだけど、結局、昨晩あいつは宿屋に来なかったんだ。
朝まで待ってたんだけど、一向に来る気配もなくて、それであちこちで話を聞きながらここまで来たんだけど、あいつらしい奴を見たって人もいないんだ。
一体、どこへ行ったんだろう?」

「それはおかしいね。
あんなにセリナに会いたがってたのに…」

「一応、宿屋には頼んどいたんだけどな…
とにかく、俺、今夜も宿屋に泊まるよ。」

「フレイザー…なぜそんなにその者にこだわる?
その者は、身元も明かさず、その上、セリナに異常な関心を持ってるって話じゃないか。
そんな者とセリナをどうして会わせる?
危険だとは思わんのか?」

「だけど…あいつは……」

「突然姿を消したというのも、どうも怪しい。
フレイザー、今夜、そいつが宿屋に来なければ、もうそいつのことは忘れてくれ。
セリナの母親のことはもう心配ないだろうが、私達はまだこの先も旅を続けねばならんのだ。
君も、そんな少年のことより、もっと他に心配する事があるだろう?
面倒見が良いのもたいがいにしておくんだな。」

ダルシャの言うことはもっともなことで、フレイザーは何も言い返すことが出来なかった。



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