夢の硝子玉 10 「……フレイザー、どうかしたのか?」 フレイザーの放心した様子に、ダルシャは思わずフレイザーの顔をのぞきこんだ。 「い、いや…なんでもない。 とにかく、この話は俺に任せてくれ。 もう一度、エリオットとゆっくり話してみたい。」 「あぁ、わかった。 彼女も私より君の方が話しやすいだろうからな。 何か困ったことがあれば、またいつでも相談してくれ。」 「ありがとう、すまなかったな。 ……そろそろ戻ろうか、二人が心配してるかもしれない。」 * 「あ、フレイザー、どこ行ってたの?」 まだ少し腫れた瞼をしたエリオットが声をかけた。 「いや、ちょっとダルシャと庭にな…」 そう言いながらフレイザーはダルシャに向かって頷いた。 「フレイザー、ところで、ジャックはどうしたの?」 「そう!それなんだけど、結局、昨晩あいつは宿屋に来なかったんだ。 朝まで待ってたんだけど、一向に来る気配もなくて、それであちこちで話を聞きながらここまで来たんだけど、あいつらしい奴を見たって人もいないんだ。 一体、どこへ行ったんだろう?」 「それはおかしいね。 あんなにセリナに会いたがってたのに…」 「一応、宿屋には頼んどいたんだけどな… とにかく、俺、今夜も宿屋に泊まるよ。」 「フレイザー…なぜそんなにその者にこだわる? その者は、身元も明かさず、その上、セリナに異常な関心を持ってるって話じゃないか。 そんな者とセリナをどうして会わせる? 危険だとは思わんのか?」 「だけど…あいつは……」 「突然姿を消したというのも、どうも怪しい。 フレイザー、今夜、そいつが宿屋に来なければ、もうそいつのことは忘れてくれ。 セリナの母親のことはもう心配ないだろうが、私達はまだこの先も旅を続けねばならんのだ。 君も、そんな少年のことより、もっと他に心配する事があるだろう? 面倒見が良いのもたいがいにしておくんだな。」 ダルシャの言うことはもっともなことで、フレイザーは何も言い返すことが出来なかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |