夢の硝子玉 1 「あ、あそこだ!」 三人は、板切れに座ったまま夜を明かした。 振り落とされないように緊張していたためか、誰も眠る事はなかった。 やがて、朝日が顔を出す頃、三人の瞳にヨギラの町並みが映った。 「信じられない! こんなに早くここに着くなんて! あんた、たいしたもんだな。」 ラスターはエリオットにどこかうっとりとしたような視線を向けた。 「へへっ。こっちこそ、助かったよ。 君がこの町の方角を教えてくれなかったら、僕達、まだここには辿りつけなかったと思うよ。」 昨夜、言い争いをしていたのが嘘のように、二人はすっかり打ち解けていた。 「だけど…これからどうしよう? 腹減ったけど、俺達、全然金がない…」 「それに、ちょっと休みたいよね。」 「そうだなぁ… 働き口を探すにしてもすぐにはみつからないだろうし、売れるようなもんも持って…あ…!」 ラスターの視線が、フレイザーの懐中電灯に止まった。 「これなら売れるんじゃないか?」 「こんなものが…?」 * 「こんなことならもっといろいろ持って来るんだったな!」 「本当だね。 あれがこんなに高くで売れるなんてね。」 道具屋を訪ねた三人は、懐中電灯の他にフレイザーとエリオットの付けていた腕時計とフレイザーのネックレスを売りさばいた。 道具屋の親父は、こんなものは見た事がないとたいそう興奮し、ラスターが目を丸くする程の金額で買い取った。 ラスターによると、三人で二〜三ヶ月は宿屋暮らしが出来る金額だと言う。 「あんたら、一体どこであんなものを手に入れたんだ?」 「そ…それが、まだ記憶がなくて…」 「道具屋の親父も見たことがないってんだから、もしかしたらこの国のものじゃないのかもしれないな。」 「そ…そうだな。 異国の物なのかもしれないな。 そんなことより、ラスター、おまえはあんな所で何をしてたんだ? 家はあの近くなのか?」 ラスターは首を振った。 「俺…家を出て来たんだ。」 「家出……?」 「……元々、親父とはそぐわなかった。 親父は俺のことを憎んでるんだ… なにかっていうと、毎日、喧嘩ばかり… 慣れてるとはいえ、俺ももういいかげん疲れちまって…」 「でも…親父さん、心配してるんじゃ…」 「心配なんかしてるかよ! 俺が出て行って、きっとせいせいしてるさ!」 語気を荒げるラスターに、二人は何も言うことが出来なかった。 [次へ#] [戻る] |