夢の硝子玉 26 「ジャック、余計なお世話かもしれないが、おまえも出来るだけ仲間を作った方が良いぞ。 いざという時、一人じゃ心細いだろ…?」 「俺は…他人と一緒に行くくらいなら一人の方がずっと良い……」 「……そうか、なら好きにしろ… でも、本当に仲間って良いもんだぜ。 ……とは言っても、うまくいかないこともあるにはあるんだ。 俺の仲間には貴族のことを憎んでるひねくれ者もいてな、そいつがしゅっちゅうダルシャに絡むんだ。 その度に俺達も気を遣わないといけなくてな。」 「フレイザーは一体何人で旅をしてるんだ? 金持ちのダルシャとそのひねくれ者と…魔法使いもいるって言ってたな。 四人で旅してるのか?」 「いや、五人だ。 あとセリナっていう女の子がいる。 ちょっと変わった子なんだけど、かなりのべっぴんさんだぜ。 しかも、髪の毛が銀色なんだ。」 「銀色の髪……! ま、まさか……」 ジャックの驚きようは尋常なものではなかった。 「……どうした?銀色の髪の毛になにか覚えがあるのか?」 「そ、そうじゃない……ただ、そんな髪の色の人間なんて見たことなくて…いや、そんな人間がいるなんて信じられない!嘘だ!そんなこと嘘に決まってる!」 ジャックは、青い顔をして立ち上がり、その身体は興奮のためか小刻みに震えている。 「ジャック、一体どうしたんだ? 俺がそんなことで嘘を吐いてどうなる? セリナの髪の毛は本当に綺麗な銀色なんだ…」 ジャックは、放心したように椅子に腰を降ろした。 「ジャック…?」 「じゃあ……」 「どうしたんだ?」 「じゃあ、本当にそんな髪の色の人間がいるのかどうか、俺をその子に会わせてくれよ! そしたら信じられる!」 「会わせるのは構わないが… でも、おまえの用は良いのか? 行く場所が決まってたんじゃないのか?」 「俺は…俺はただスエルシアで一旗上げようと思って出て来ただけだ。 行く場所なんて決まってない!」 「……そうだったのか…わかった。 なら、セリナに会わせてやるよ。 ……あ〜あ、料理が冷めちまった。 早く食べてしまおうぜ!」 ジャックは頷き、テーブルの上の料理を口に運び始めたが、その瞳が別の何かを見ていることをフレイザーは見逃してはいなかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |